真心ブラザーズ+奥田民生 インタヴュー

By RollingStone Japan 編集部

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 映画『マイ・バック・ページ』の舞台は1960年代後半の全共闘時代。東大を出て大手新聞社に勤務、社会を鋭く批判するジャーナリストを目指す青年が主人公だ。腕に“報道”という腕章を巻き、熱く燃える時代から一歩離れた安全な場所に身を置く自分に“センス・オブ・ギルティ(罪の意識)”を感じている。あるべき姿と社会での立場に悩む、そんなまっすぐな時代を描いている。そんな映画の舞台となった60年代後半に生まれた奥田、YO-KING、桜井。3人の“僕らの時代”とは?

201107_oy_002 ——まずは、今回主題歌を歌った映画『マイ・バック・ページ』の感想から……。

奥田「実は久々に映画観ました。そもそも映画を観ないんです。でもこの映画、面白かったなぁ。映画じゃないと、こういうヒリヒリしたムードになることもないし、何か新鮮でしたね」

——3人は、ほぼ同世代ですよね? この映画の感じとは全く逆のベクトル、つまり“気楽に行こう!”っていう空気を放ってきたと思うんですが、何があってそのベクトルに?

奥田「僕らの先輩たちがすでにそうだったからなぁ。音楽で言うと、いろんなのがだんだん増えて、“音楽で世界を変える”とか、“金持ちになる”とか、“サクセスする”とか、そういうものは薄れて、音楽そのものが楽しい時代になった。音楽を演奏することそのものが楽しいわけで、音楽を使ってメッセージっていうのが……個人的にはイヤなんだ」

YO-KING「今だって政治的なことがないわけじゃないけど、音楽でやろうとは思わない。反体制って不安を煽るじゃない? 資本主義って不安を煽っていないと立ち行かない経済だから仕方ないけど。だけど、音楽って安心とかでお金が稼げる数少ないビジネスなんだよね。だから聴いた人が安心するような音楽を最近はやろうと思う」

桜井「僕らの時代はビートたけしさんが決定的だった、と思うんです。この映画みたいにまっすぐイデオロギーがどうしたとかじゃなくて、“ユーモア”が求められた時代。もう一台カメラがあって、演じている自分を笑っているみたいな空気になった。ディランも含め、フォークを否定する空気になったよね。もちろん今聴けばカッコいいんだけど、そういう時代に育ったんで、たけしさんみたいなことを音楽でやるにはどうやったら粋なのかを探す世代だった気がする。正直、60年代後半の世代を『まっすぐで、きれいで、美しいじゃん!』って言えるようになったのは最近です」

 

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——映画だと時代の中心に学生運動がありました。今で言えば3・11の大震災が日本の真ん中にある。僕らはユーモアを手にしたかもしれませんが、時代の真ん中にあるホットなものとどう距離を置いていいか、わからなくなってしまったような気がします。ホットなものとの距離感、どんなふうにしていますか?

YO-KING「僕は基本的に世の中って、どんどん良くなってると思ってるんで、心配してない。“関心を寄せる”っていうのは大事だと思うけど。でもまずは自分の暮らし、生活をちゃんとやって、お金を使って、経済を回して、お金を稼いで、税金を納めるっていうのがいちばん復興に近いと思う。もちろん、現地に行って、ボランティアをやっている人も素晴らしいと思う。でも、まず人を楽しくする前に、自分が楽しくならないと。人の機嫌はとれないけど、自分の機嫌はとれるでしょ? まず自分の機嫌をとっていくと、周りの人はそういう人にひっぱられるから。そういう力を信じてる」

桜井「距離っていうか、何をするかっていうのは難しい。もちろん動けることは動くけど、それよりひとまず曲を書く。いい曲を書く。それは自分のサジ加減でどうにでもなる。自分の努力でやっていけることをやりたいと思う。そういうことをひとつひとつやりながら、距離を確認するしかないですよね」

奥田「やっぱり人には役割分担があると思うのよ。今まで言いたいことを隠してきた人が、震災があったからって急に言い出すのっておかしいじゃないですか。役割分担を考えたら、自分の出番は必ずやって来るって思う。今みんなが“わー”ってやっていることに乗っかって何かをすることではないと思っているんで。それを踏まえて、頭を使わなければと考えています。だから普通にしているしかないと思っています」

——常に平常心、ですか?

奥田「平常心になっていたいんですよ。みんな落ち着いてって言う立場じゃないんだけど、『この人、あんまりバタバタしてないな』とは思われたい。まぁ僕としては、迷惑が掛かるのはイヤなんで、何かを送ったり、寄付するのも、来年してもいいじゃないですか? 落ち着いてやった方がいいこともいっぱいあると思うから。もうちょっとゆっくりした方がいいかなって、全体の様子を見ていると思いますね」

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