煙たい男たち|Case12 武藤昭平

By RollingStone Japan 編集部
独特の世界観でファンを魅了するジャズパンクバンド、勝手にしやがれ。
そのリーダーにしてドラマー&ヴォーカリスト武藤昭平のブレない美学に迫る。


オイルライターで火を点ける姿がとにかくイカしている。吸っているのはフランスの銘柄、Gitanes(ジタン)。セルジュ・ゲンスブールの影響だそうだ。「海、セックスそして太陽」という曲のPVで歌いながらずっと吸い続ける姿に魅せられて、この煙草を吸うようになった。

武藤の青春時代には、俳優やアーティストの多くが当然のように煙草を吸っていた。今となっては珍しいのかもしれないが、当時は彼らに憧れた多くの若者が、真似して吸い始めたものだ。「例えばストーンズを好きになるとする。そうするとキースが煙草を吸っていた。ジョン・レノンもジタンを吸ってたしなぁ。何かのオフショットの写真で、ギターを持ったジョンの横に置いてあったんだよね」。バイクに乗る、長髪にする、ライダースジャケットを着る、タトゥを入れる……。憧れのアーティストを真似て何かを始めたという経験は、煙草に限らず多くの人にあるはずだ。武藤の場合、影響されたのはセックス・ピストルズやジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』。そして、20代前半で出会ったジム・ジャームッシュの監督作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』だった。この映画でトム・ウェイツを知り、そこからビート・ジェネレーションにも興味を抱くようになる。ジョン・ルーリー演ずるウィリーに自身を投影している武藤にとって、この映画はバイブル的な作品だ。

だいたいの人間は大人になるにつれて流行や世間の波にのまれ、憧れやこだわりを失っていく。そんななか武藤は、若い頃に『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の世界観に魅了されてから、当時の価値観を貫く。「若い頃って自分のキャラクターをアピールするために、性分に合った〝何か〟を探し続けるものじゃない。で、そこで見つけたものにハマるのは、自分にとって等身大だから。しっくりきてるんだから、ころころ変える必要はないでしょ。俺の周りにいるのもブレてないヤツばかりだし、ずっと同じスタイルを貫くっていうのは特別なことでも何でもないと思ってる。俺は若い時にしかできないようなものに触発されることがなかったのね。歳をとって、そのままでもカッコいい。そんなものが、当時から好きだったから」と煙草を燻らせながら涼しい顔で言う。

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