煙たい男たち|Case19 中村義洋

By RollingStone Japan 編集部
映像化困難といわれる原作を次々に映画化。
手腕の秘密と、監督としてのこだわりに迫る。


取材の間も、ずっと煙草を吸っている。撮影現場でも編集の作業中でも、喫煙できる現場では吸い続けているらしい。似合うというのを通りこして、煙草が身体の一部のようだ。

名前だけですぐにはピンとこないという人でも、中村監督の作品を観たことがある人は多いと思う。『アヒルと鴨のコインロッカー』、『チーム・バチスタの栄光』、『ゴールデンスランバー』、『白ゆき姫殺人事件』などの数々のヒット作を、立て続けに発表してきた。観る側に作り手が透けて見えないように撮るというのが、中村のスタイルだ。同じヒットメーカーでも、クエンティン・タランティーノや伊丹十三、三池崇史のような、作品を観ると監督の顔が浮かぶような監督とは対照的な作品作りをする。抑揚を抑えた口調で淡々とインタヴューに応じる姿は、まさに彼の仕事への姿勢を体現している。

中村は、子供の頃から映画が好きだった。はじめは単に観る側としてのファンだったそうだが、高校3年生の時に伊丹十三監督の作品に出合ったのをきっかけに、作る側に興味を持つようになる。大学に入り、映画研究会に所属。8ミリ映画を撮りだした。作品が「ぴあフィルムフェスティバル」で準グランプリを受賞し、映画人としての人生が始まる。

自主映画から映画の世界に入ったと聞いて、撮り方やフィルムなどにさぞこだわりがある、うるさ型の監督なのかと思いきや、そんなことはない。「撮り方とかへのこだわりはあんまりないんですよね。物語が効果的に伝わるような方法で撮るだけで」

中村が何よりも大事にしているのが、現場のスタッフの知恵だ。「各シーンの裏に映画人たちの工夫がいくつも詰まっていたりするんですよ。決してスクリーンには映らないそういうものを集めて作品にするのが好きで」と、映画作りの喜びを話す。実際に、まさかと思うような小道具が活躍したりするそうだ。「暗い中、照明で俳優の顔を照らすと、耳が真っ赤に透けるんですよ。そんな耳で感動的な台詞を言われても興醒めだから、ガムテープを耳の裏に張り付けて、透けないようにしたり。そういう試行錯誤が昔から大好きで」

伊坂幸太郎原作の『ゴールデンスランバー』をはじめ、複雑で映像化困難と言われた原作を多く映画化してきた中村監督。難しい作品への挑戦にこだわっているのかと思いきや、そうでもないそうだ。「あえてそこに挑戦しようというつもりは、まったくないですね」と、即答されてしまった。「それよりは、ストーリーのテーマに共感できるかどうかが大事で。それができたら、あとはどんなに難しくても映像化するしかないですからね」

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