煙たい男たち|Case21 葉加瀬太郎

By RollingStone Japan 編集部
好奇心に従い、自由に生きる。
ヴァイオリニストの新たな道を開拓した男。


トレードマークのもじゃもじゃ頭はいかにも芸術家という感じだし、私服のルイ・ヴィトンのTシャツもさらりと着こなしている。東京藝術大学出身で、2007年からは家族とロンドンに移住し、東京との間を行ったり来たりという生活を送っている。これだけ書くと、気難しいブルジョアなアーティストみたいだ。でも、葉加瀬はむしろ大阪の芸人さんのように多弁でひょうきんで気さく。自由でやんちゃで、自分の気持ちに正直に生きている。

葉加瀬は大阪の千里で生まれた団地っ子だ。時代状況を考えれば、普通の家庭の子供がヴァイオリンをやること自体がまれだった。それでもユニークな父親は、葉加瀬がヴァイオリンに興味を持つと、応援してくれた。

10歳で将来ヴァイオリニストになることを決め、中学の3年間はコンクール入賞に向け、一日10時間くらい練習に励んでいたという。「とにかく、同じフレーズを100回弾く。そのフレーズを、テンポを上げてまた100回弾く。さらにまたピッチを上げて100回弾く。それを10時間くらい繰り返す。だんだん手が痺れてくるんだけど、次の日になると身体が覚えていて、弾けるようになる。無茶苦茶地味で過酷な練習だった」

それだけ練習しても中学時代、コンクールでは2位までしか行けなかった。中学を卒業した葉加瀬は、京都の音楽専門の公立高校に入る。そこはいわば藝大に入るための予備学校。ひたすら練習に励む日々が続いた。

こうして晴れて東京藝大に入るのだが、ここからが自由人の葉加瀬らしい。入学したばかりの4月、セックス・ピストルズのコピーバンドに出会い、それまでクラシックしか知らなかった葉加瀬は衝撃を受ける。そこで一気にロックに目覚めてしまうのだ(後に葉加瀬のソロでのプロデュースを担当したアート・リンゼイに「ピストルズのコピーバンドっていうのが酷い!」と爆笑されたそうだが、リンゼイに同意!)。あんなにも苦労して入った藝大にも、もはや用なしと授業には出なくなり、早速演奏のアルバイトを始める。

だが、葉加瀬は普通に演奏するだけではなかった。例えば、劇団四季の『ウェストサイド物語』で演奏した時は、自分の番が回ってくると、オケピの中で立ち上がって演奏した。観客からも演者からも目につき、もともとやんちゃな葉加瀬は目立つことに快感を覚えるようになる。

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