LIVE REPORT Rolling Stone presents THE ROCK FACTORY -SESSIONS-

By RollingStone Japan 編集部

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 夜になって雨が降りだしたものの、まだ蒸し暑さの残る2015年9月16日。東京は六本木のEX THEATER ROPPONGIにて、『THE ROCK FACTORY ─SESSIONS─』が開催された。
 このイベントはローリングストーン日本版の100号突破を記念し、2012年より行われてきた『THE ROCK FACTORY』をリニューアルしたもの。“奇跡の対バン”“奇跡の対談”をテーマに、一緒に観られる機会の少ないアーティストを組み合わせてブッキングするライヴである。

 折しも、安全保障関連法案を巡って日本国内が揺れる真っただ中。この日は参議院本会議で法案が可決、成立する実質2日前だった。新たなイベントがこうしたタイミングでスタートするのも、カウンターカルチャーを象徴する雑誌であったローリングストーンの出自を思えば、因縁めいたものを感じずにはいられない。音楽イベントとはいえ、いつもと違う緊張感を持って会場へ足を運んだのは私だけではないはずだ。

 さて、最初にステージに登場したのはLOVE PSYCHEDELICO。ご存知、KUMIとNAOKIのふたりからなるユニットである。この日はサポートメンバーにCurly Giraffeこと高桑 圭を迎えたトリオ編成。広いステージの真ん中に固まって座る様がなんだか微笑ましい。ライヴは「Your Song」でスタートした。2000年に発表されたセカンドシングルは、もう1組のファンも多くいたであろうオーディエンスの心を「つかむ」のに十分な楽曲だったようだ。最初の音、最初の声で会場の空気が一変するのを、スタンドの最後列にいた私でも感じられた。
KUMIの歌声は言うまでもなく強力な個性ではあるが、それに頼らない絶妙なアンサンブルもまた見事である。
 本人のMCによると、NAOKIは転倒して左腕を骨折したばかり。前日に手術をし、ライヴの時だけギプスを外す許可を受けての出演であったという。しかし、怪我の影響を微塵も感じさせないプレイで観客を魅了。4曲目の「裸の王様」ではブルージーなギターソロを披露して喝采を浴び、後のMCで「本当に骨折しているんだよ」と笑わせる一幕もあった。

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 個人的なハイライトは「Last Smile」、Curly Giraffe featuring LOVE PSYCHEDELICO名義の「Mood」、「LADY MADONNA〜憂鬱なるスパイダー〜」と、タイプの異なる名曲を畳みかけたラストの3曲になる。少しずつ高められた感情が最後に解放されるような、カタルシス的な快感を味わうことができた。会場全体を熱い空気に包みこんだまま彼らのライヴは幕を閉じた。

 続いて、ホストMCの呼びかけで姿を現したのは、佐野元春 & The Hobo King Band。客席は大きな拍手で迎える。元春を中央に、向かって右からドラムの古田たかし、ベースの井上富雄、チェロの笠原あやの、いちばん左にキーボードのDr.kyOnという見慣れた布陣。だが、だからこそ否が応でも期待は高まる。
 1曲目は「トーキョー・シック」。雪村いづみとのコラボレーションによって生まれた曲である。原曲はビッグバンドによるスウィングが特徴となっているが、このバンドでは軽快なリズムのロックンロールといったアレンジに。たまらず身体を動かす姿がそこかしこに見られる。“街に出かけようよ”というフレーズが耳に残り、まさにこの時行われていた安保法案のデモについて思い巡らせていると、MCで元春は次のように語り出した。「今の政府はどこかとっちらかってるように思う。ソングライターとは街をスケッチするもので、次の曲は1980年代に書いたんだけど、今日の夜にこそ合っているかも。僕らの国のリーダーの顔を思い浮かべながら聴いてほしい」
 そうして始まった曲が、2011年に発売されたセルフカヴァー・アルバムのタイトルにもなっている「月と専制君主」だ。当時の元春はアルバムについて「(制作した)2010年現在でも、僕にとってリアリティのある曲を選びました」とコメントしているが、それが今再びこのような形でリアリティを持つとは皮肉なものである。とはいえ、この時この曲を聴いた者は、これまで以上に感情を揺さぶられたに違いない(余談になるが、私自身、この曲に背中を押されるようにして、イベント後に国会前へと足を運んだのだった)。

 今年がデビュー35周年という節目に当たることもあり、曲間のMCでは「感謝」という言葉がたびたび聞かれた。それはファンへの感謝であり、バンドメンバーへの感謝であり、また、昔の曲を今歌えることへの感謝である。そうした気持ちがあるからこそ、時代時代でたとえ聴かせ方、聴こえ方が変わったとしても、まばゆい魅力を放ち続けるのだろう。ライヴの終盤に用意されていたオリジナルとは異なるアレンジの「夜のスウィンガー」が、それを雄弁に物語っていたように思う。

 ほどなくして本編は終了。パフォーマンスを称える拍手はアンコールを求める拍手となり、メンバーはLOVE PSYCHEDELICOとCurly Giraffeを引き連れて再登場する。「今夜、この曲を歌うのは意味があること。みなさんの心にも響くことを願います」という元春の前振りから披露されたのはボブ・ディランの「風に吹かれて」。ステージにはくつろいだムードが漂うが、それが逆にこの曲のメッセージをことさら強く感じさせた。これからもずっと音楽を楽しめる日々が続くことを、願わずにはいられない─。
 以下はライヴ後のステージ上にて行われたトークセッションから。

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─出会いとなったテレビ番組でのセッションのことから聞かせてください。

KUMI「ご一緒したいという気持ちはずっとありまして、好きなミュージシャンと一緒に演奏する企画を利用させてもらったんです(笑)」

NAOKI「KUMIさんはボブ・ディランと佐野さんのライヴがある時は、自分のラジオ番組でも平気で飛ばします(笑)」

─おふたりにとって佐野さんの音楽の魅力はどういうところですか。

NAOKI「僕は言葉。佐野さんがいなかったら、LOVE PSYCHEDELICOもなかったと思うんですよ。日本語のロックを哲学として僕らに提示してくれたのが佐野さんなんです」

佐野「とはいっても、LOVE PSYCHEDELICOの日本語の乗せ方はユニークだよね。どうしたらあんなふうになるのかとても不思議です(笑)」

KUMI「私が惹かれるのはアイデアかな。言葉、メロディへの乗せ方、メッセージ……すべてがアイデアに満ちていて、聴くたびにひらめきがあるし、ワクワクするんですよね」

─音楽を取り巻く状況が変わる中で、どんな音楽を作っていきたいか聞きたいのですが。

佐野「僕が作りたいのは、ダンスしながら考えるような音楽。言葉は理知を司り、ビートは肉体を司っていると思うんだけど、理知と肉体のそれぞれが微妙に影響し合っている音楽。僕が聴くとLOVE PSYCHEDELICOの音楽もそうだし、自分もそういう音楽を目指したい」

NAOKI「自分たちだけで完成させたくないというのはあります。聴く人のツッコミどころを残すことで、それがきっかけで新しいものが生まれるような。僕がボブ・ディランとかビートルズの『ホワイト・アルバム』が好きなのも、そういうところです。音楽は完璧だけど、アレンジとかにそうした余地が残されていると思うので」

佐野「NAOKIくんの世代でディランとかのルーツ・ミュージックを熱心に聴いて、自分たちのものとして具現できるのは珍しいことだと思うんだけど、最初に触れたのはいつのこと?」

NAOKI「音楽を始めてから聴くようになったのは20代だった1990年代です。ロック寄りのソウルがブームだったんですが、へそ曲がりなので、自分はあえて8ビートに行こうと」

佐野「友達少なくなかった(笑)?」

NAOKI「すごく少なかったです(笑)」

─最後にローリングストーン誌へメッセージを。

佐野「僕にとっては身近で大事な音楽ジャーナル。ロック、ファッション、フード、ポリティック、それらを並列に扱うコンセプトはとても素晴らしいこと。日本版でも最近はポリティカルな記事が多いけど、周囲の雑音に戸惑うことなく、コンセプトを貫いてほしい」

KUMI「私たちはカバーになりたいです(笑)」

佐野「まだなの? それは大きな間違いだね(笑)」

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