COBAIN: モンタージュ・オブ・ヘック 〜ザ・ホーム・レコーディングス

カート・コバーン | Jon Dolan / ユニバーサル

Rolling Stone Japan 編集部 | 2015/12/10 00:00

素の自分をさらけ出したコバーン

 音楽ドキュメンタリー映画『モンタージュ・オブ・ヘック』のサウンドトラックである本作。そのとてもパワフルな内容は、まさにカート・コバーンの“幻の回顧録”と言うにふさわしい。

 監督のブレット・モーゲンは、200時間に及ぶカセットテープを聴き直し、これらの楽曲、デモ音源を発掘した。全31曲のなかには、ニルヴァーナの熱狂的なファンのみが共感を得られるものも数曲ある。そのおかげか、一見本作は、彼の素晴らしいレガシーを薄っぺらなものにしてしまうもののようにも思える。しかし、アコースティックのインストゥルメンタル2曲(「ザ・ハッピー・ギター」「リトリート」)や、精神的苦痛を歌った「シー・オンリー・ライズ」、そしてコバーン最後のレコーディング曲「ド・レ・ミ・メドレー」を含む内容は意外なほど説得力があり、また啓示的でもある。

 映画同様、本作でも“ワシントン州アバディーンでのつらい幼少時代”と“苦悩する才能”との間に、密接な関係があることが明らかにされる。「リハッシュ」のデモでヘヴィなリフを披露、大声でソロとコーラスを叫ぶコバーン。彼が後に到達する音楽を予想させる楽曲だ。またその数曲後には、コバーンがティーンエイジャーの自殺未遂に関する朗読を披露。いかに自身を抹消し、同時に自己を神格化していたかがわかる。

 たとえ彼が自分を憎み、死にたいと思っていたとしても、自身の最も初期のぞんざいな創造物自体は、後にクロニクルとなるにふさわしいということが恐ろしいほどにわかっていたかのようだ。もちろんのこと、これは正解だった。

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