サウンドガーデン クリス・コーネル:知られざるフォークへの情熱、ニール・ヤングへの共感

2009年発表のソロアルバム『スクリーム』では、ヒップホップの大物プロデューサー、ティンバランドとタッグを組みました。アルバムはトップ10入りを果たしたものの、一方で酷評も多く見られました。振り返ってみて、あの作品についてどう感じていますか?

あれは壮大な失敗作だった。身内にティンバランドのいとこの友達がいたんだ。ティンバランドが俺と仕事をしたがってるって彼が教えてくれて、俺としても『面白いな、やってみよう』っていう感じだった。2週間でブッ飛んだアルバムが作れると思ったし、実際そのとおりになった。俺は作品自体はよかったと思ってるんだよ。問題だったのは、レコード会社があのアルバムをうまく宣伝することができなかったことさ。『これはうちの局ではかけられない。たとえクリス・コーネルの新作であっても』1990年から俺の曲をかけているラジオ局でさえ、そんなふうだったんだよ。

ーナイン・インチ・ネイルズとのツアーでは、
90年代を思い出してノスタルジックな気分になることはありましたか?


30年続けているバンドでツアーに出れば、ノスタルジックな気分にもなるさ。あのツアーは、若いファンが両バンドのことを同時に知るいい機会だった。トレント・レズナーと話せば、彼が過去ではなく、未来を見据えているのが分かる。彼も同じように感じてくれているといいんだけどね。ホワイトスネイクとスティクスのジョイントツアーのような、ただノスタルジーに浸るだけのショーとはわけが違うよ。

ー注目している若手バンドはいますか?


古き良きロックを思わせる、いい意味でのリバイバルが起きつつあると感じてる。ジャック・ホワイトや、(ザ・ブラック・キーズの)ダン・オーベックなんかがいい例だね。ただ残念なのは、ロックやオルタナティブロックという言葉に、ルールに縛られたジャンルというイメージがついてしまっていることだ。ロックンロールは人々の声そのものであるべきなんだよ、金の亡者たちが支配するものじゃなくてね。『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観てみなよ、今のロックはあの映画で描かれているヒップホップの世界と何ら変わりないんだ。

ー映画といえば、カート・コバーンのドキュメンタリー『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』は観ましたか?

いいや。わざわざ映画館に足を運ぶほど興味ないんだ。いつか気が向いたら観るよ。

ーデイヴ・グロールによるドキュメンタリー・シリーズ『ソニック・ハイウェイズ』のシアトル編に出演されていました。あのエピソードで、ご自身の知るシアトルは描かれていましたか?

当時の様子を伝えるのは無理さ。それに俺にとっては、人々が騒ぎ始めた頃よりもずっと昔のシアトルのほうが馴染み深いんだよ。シアトル・シーンなんてものは存在しなかった。どんなにたくさんのファンがついている地元のバンドでも、よその町から来たダサくて人気もないバンドの前座をさせられていた。外野の人間が勝手に描いたイメージに加担する気はまったくなかったんだ。

ー今後ソロツアーとサウンドガーデンのニューアルバム制作が控えています。方向性のギャップに戸惑ったりしないのでしょうか?


むしろリフレッシュできるよ。ニール・ヤングになった気分さ。彼はクレイジー・ホースとツアーに出て、ブッカー・T.&MG’sと世界中をまわり、7本のギターを携えてソロツアーをやった。今ならその気持ちがよくわかる。彼は別に自分探しをしてたわけじゃないんだよ。

ーすべて彼の一部だったと。


そう、俺も同じさ。

TRANSLATION BY MASAAKI YOSHIDA

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