大森南朋15年ぶりにバンド活動開始「死ぬまでにもう一回、やっておきたかったんです」

By Joe Yokomizo 2016/01月号 P98〜101 |
Photographs by Maciej Kucia (AVGVST)
連載 煙たい男たち|Case25 大森南朋

インタヴュー中もずっと煙草を吸っている。いつから煙草を吸ってるんですか? と聞くと「酒も煙草も若い時から」とあけすけに答えてくれる。それにしてもこの男を見ない日はない気がする。テレビドラマ、映画、CMとジャンルを問わず活躍。ドラマではNHK大河ドラマなどに出演する一方、映画ではかなり際どい役もこなす、日本を代表する役者のひとりだ。きっと収入だって潤沢なはずで、その知名度といい、いわゆる、芸能人と呼ばれる存在のはず。ところが……取材などでたまに会うが、ギラギラした芸能人オーラはまったくない。あるいは……たまに飲み屋で出くわすが、それはバブリーな店ではなく、大衆的な酒場で、音楽か演技の話をしてたいがい泥酔している。芸能人という言葉より、俳優、アーティストという言葉がしっくりくる。大森南朋はそんな存在だ。

そんな大森がバンドを組み、CDをリリースした。バンドの名前は“月に吠える。”。萩原朔太郎の詩集と同じタイトルだが、それは偶然で、突然頭に降ってきた名前らしい。そのバンドの音がなんとも言えない味わいだ。一曲目からあのストリート・スライダーズ全開のロックンロール。大森曰く「歌詞に出てくる “JUMPTHE MIDNIGHT” なんて完全にスライダーズです。リフも “Baby, Don’t Worry” に触発されまして(笑)。実際、この曲は完全にスライダーズへのオマージュです」と音楽について語る大森は少年のような笑顔だ。

その笑顔にはわけがある。役者として大成功を収めている大森だが、実は29歳までバンドをやっていた。バンド名は“ジャングルビーンズ”。大森はギターを担当。吉祥寺や中央線沿線のライヴハウスで活動していた。ところがどうにも煮え切らないバンド活動、年齢も29になりバンドは解散の道を選んだ。そして兼ねてからやっていた役者の道に専念したわけだ。大森はこう振り返る。

「29歳は過渡期。青春も終わりかけていて。バンドは4人組みだったんですけど、4人だともう足の引っ張り合いで。嫌気がさしてきてしまって。俳優だとひとりでできる。台詞覚えて、現場に行って自分だけで勝負できる。バンドだと練習したり話しあったり曲作ったり。それに嫌気がさしてやめたんです」

そこからもう15年近く経過してのバンド活動開始。「死ぬまでにもう一回、やっておきたかったんです。夢とか言うとクサイですけど、やっとやれたって感じです。でもあの時以来、ちゃんと組む初めてのバンドなんですけど、メンバー全員、バンドで挫折経験があるのと、みんな40歳前後なので、相手に対して思いやりもあって。若い頃は頭でっかちだったけど、今は身体でわかるところも」と、うれしそうにバンドのことを語ってくれる。そしてそのサウンドは先述の通り、一曲目からストリート・スライダーズ全開。さらにアルバムを聴き進めて行くと、RCだったり山口冨士夫だったりと中央線沿線の匂いがプンプンする。

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