さらばスターマン: 史上最高のロックスター、デヴィッド・ボウイ

作品中でも耳にすることはないその音楽は、ボウイの代表曲のひとつである『スターマン』に登場する、壮大な宇宙のジャイヴのようなものだったのかもしれない。決して華やかとは言えないスタートを切ったボウイだったが、1972年7月5日に出演したトップ・オブ・ザ・ポップスでこの曲を演奏したことをきっかけに、その名前はイギリス全土に轟いた。後のイギリスの音楽シーンに多大な影響を及ぼしたその4分間のパフォーマンスは、40年以上経った今でも少しも色あせていない。70年代に制作されたBBCのドキュメンタリー『クラックド・アクター』は、ボウイの最もリアルな姿を捉えた映像作品だ。スクリーン上のボウイはどこか落ち着かない様子で、鼻をすすり、リムジンの後部座席でアレサ・フランクリンの曲を歌い、当時のショーでお約束となっていた、骸骨の口に舌を押し付けるというハムレットを意識したパフォーマンスを披露してみせる。



彼とジョン・レノンの共作であるディスコ・トラック『フェイム』は全米ナンバー1を記録した。ジェイムス・ブラウンの『ホット』は同曲にインスパイアされたものであり、ボウイはジェームス・ブラウンに影響を与えた数少ないロックスターのひとりとなった。(不可解な発言の数々で知られるジェームス・ブラウンだが、死の直前に、もし自分のトリビュート・アルバムが制作されるならば、ボウイに『ソウル・パワー』を歌って欲しいと語っている)”プラスティック・ソウル”時代のボウイのキャリアが頂点に達していた1975年、グラミー賞授賞式に登場したタキシード姿の彼は見るからにドラッギーでやつれた表情を浮かべていたが、それがかえって彼の危うい魅力を際立たせていた。プレゼンターとして壇上に上がったボウイはこう語った。「レディース・アンド・ジェントルマン、そして、それ以外の人々へ」彼からベストR&B・パフォーマンス賞を贈られたアレサ・フランクリンは興奮した様子でこう語った。「最高の気分よ、だってデヴィッド・ボウイにキスするチャンスをもらったんだもの!彼は私が最も尊敬するアーティストのひとりなの」

Translation by Masaaki Yoshida

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