Rolling Stone

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram

ショーン・ペンが語る:麻薬王エル・チャポとの会談(前編)

SEAN PENN | 2016/01/18 20:00

| 10月2日の筆者ショーン・ペンと当時逃亡犯だったエル・チャポ・グスマン。 |


私たちは丘にある階段を数段上り、バンガローの傍の平地に立った。そこに地元の家族がタコスやエンチラーダ、チキン、ライス、豆や新鮮なサルサ、そして……カルネ・アサーダ(牛のステーキ)を運ぶ。“カルネ・アサーダ”とはフアレスのような街で麻薬組織による大量の処刑が行われたとき、死体を指す言葉としてカルテルでしばしば使われる言葉だ。それゆえ私はタコスを選ぶ。彼は私たちのいるピクニックテーブルに歩いてくる。私たちは彼に飲み物を差し出す。私たちはケーブルに並んでつけられている電球のかすかな光の下に座っている。しかし周囲が突然暗くなる。私には30人から35人程度の人しか認められない。(エル・チャポはその後エル・アルトに、見えないがごく近くに数百人の彼の兵士が控えていたことを認めた。)目に見えるところに銃身の長いライフルはない。ダニー・トレホのような男もいない。彼の仲間に対する私の印象は、メキシコシティの大学生を想像したときのほうに近い。彼らは身だしなみがよく、いい服をきて、マナーもいい。一団の中にタバコを吸うものはいない。2人か3人だけが肩から小さなショルダーバッグを提げている。私は腰のあたりにあるそのバッグに小さな武器が入っているのだろうと推測する。私には、この宴のホストが、ケイトを怯えさせるような力の行使現場に直面させないように気遣っているように見える。彼女は私たちの中で唯一の女性だったからだ。この推測は数時間後に実際のものになる。

私たちはピクニックテーブルにつき、自己紹介をする。私の左はアロンゾだ。彼がエル・チャポの弁護士の一人であることが判明する。エル・チャポの弁護士と話をすると、いつも少し胡散臭い感じがする。彼が刑務所にいる間、訪問を許可されたのは彼の“弁護士たち”だけだった。正確には補佐官と言える者たちが弁護士と呼ばれていたのは明らかだ。もしくは迅速な権力が、彼の法務チームの一部として認定したのかもしれない。アロンゾはエル・チャポがアルティプラノ刑務所から大胆な脱走を企てる、わずか2時間前に刑務所を訪れていた。アロンゾによると彼は脱走の計画には気がついていなかった。しかしだからといって脱走が起きた後、取調官から激しく殴打されるのを免れることはなかったと彼は指摘する。

私の右はロドリゴだ。チャポが妻のエル・コロネルとの間にもうけた4才の双子の女の子のゴッドファーザーだ。エマは26才で、美人コンテストで優勝したことがある。ロドリゴは私を不安にさせる人物だ。彼の目は遠くを見ているが、正確に私を捉えていた。私は音に憶測を巡らせる。チェーンソーの音を聞く。血が飛び散るのを感じる。私はショーンの中の疑わしいパラノイアだ。私はロドリゴの右側にどうにか目を向ける。そこにはチャポの長男であるアイヴァンがいる。彼は32歳でシナロアカルテルの後継者だと考えられている。彼は成熟していて落ち着きのある、注意深い人物だ。弟同様、彼も素晴らしい腕時計が自慢だ。私の目の前にはホストが座っていた。その右にはケイトがいる。脇にアルフレードとアロンゾがいる。エル・アルトはテーブルの端に座っている。エスピノーザは立ったまま、チャポに謝り、背中を休めるため1時間ほど横になってもいいかと尋ねていた。エスピノーザの面白いのはこういうところだ。それはまるで、いつ終わるともしれない過酷な時間をかけて火山の頂上まで垂直の道のりを登り、あと3歩でカルデラの環状断層を見ることができるというところまで来たとき「昼寝をしようと思う。僕はあとで噴火口を見るよ」と言うようなものだ。
Translation by Yoko Nagasaka

RECOMMENDED

おすすめの記事