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ショーン・ペンが語る:麻薬王エル・チャポとの会談(前編)

SEAN PENN | 2016/01/18 20:00

| 10月2日の筆者ショーン・ペンと当時逃亡犯だったエル・チャポ・グスマン。 |


麻薬撲滅運動は失敗だったという、小さな議論がある。たった1年の間に、メキシコだけで麻薬に関連して2万7000人が殺されている。アメリカでは麻薬中毒者の数が増加している。私はハイチでの緊急支援と開発の分野で仕事をしているが、この国の文化を知らず、その土地とも馴染みのない官僚的な機関から、この国の問題に対して机上の空論でしかない解決方法を何度も提案されてきた。私たちは厳格で罪を追求する文化の持つ、狭い視野で麻薬撲滅運動を計画してきた。おそらくその狭い視野の中で、私たちはこの官僚たちと同じように実践的な見解を失い、精神を理論に明け渡してしまっているのだ。アメリカの納税者たちの納めた250億ドルを1年間に費やし、麻薬撲滅運動の施策は私たちの子どもを殺し、経済を疲弊させ、警察官と裁判所を多数の事件で困らせている。私たちの金をかすめとり、刑務所を囚人でいっぱいにし彼らにパンチカードを押させている。新たな一日の闘いは敗北に終わる。そしてその敗北により、改善に向けて可能でありうる構想や、他の多くの国で効果を証明された考えが実現された。快楽目的のドラッグが一部合法化されたのである。

今、50丁目にいる私とエスピノーザは日本料理店に入る。エル・アルトは隅の静かな席に1人で座っている。天井ではファンがゆっくりと周り、生魚の匂いを部屋中に行き渡らせていた。彼は体の大きな男だったが、静かで優雅な物腰で、ささやき声以上に大きな声で話すことはほとんどなかった。彼はこれまでたくさんの遠征で私を助けてくれていた。彼は世慣れていて多くの人と関係を築き、人から好かれていた。スペイン語を話すエスピノーザが、エル・アルトに私たちの計画と日程を説明する。彼は熱心に聞きながら、歯を使って枝豆を皮から出す。私たちはこのミーティングが引き返せない地点に達していると考えていた。徹底的に身を投じるか、さもなければ旅そのものを諦めることになるだろう。私たちはリスクを計算したが、私には自信があり彼らにそれを伝えた。私はこれまで何度も、戦争やテロ、汚職や災害の発生する多くの国で自分ではコントロールすることのできない経験を自らに与えてきた。悪いことが起きる場所では悪いことが起きるだろうし、起きてきた。それでも最終的には、混乱した構造の中でも得られることができる警戒に対し、深い状況的な認識力(それは完全には科学的なものではないが)と持っていたことで私は無事だった。私が翌日ロサンゼルスに行き、エル・チャポとコンタクトを取る上で重要な相手と調整することで私たちは同意した。私たちは酒を頼み、完全に科学に基づいているわけではない不安を追い払おうと、手術室で医者が言うようなユーモアに耽った。レストランの外では、ペーニャ・ニエト政府による様々な人権侵害が、彼らの祖国を麻薬による統治の犠牲者にしたのだと抗議する、メキシコ系アメリカ人たちのデモの声が続いていた。


ケイト・デル・カスティーリョ。彼女はメキシコで最も有名な女優であり、彼女がエル・チャポとの会談を仲介した。(Uriel Santana)
Translation by Yoko Nagasaka

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