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ドキュメンタリー『ボブ・ディラン:ドント・ルック・バック』の驚くべき復元作業の内幕

David Fear | 2016/01/22 17:00

| Photo: (Express Newspapers/Getty) |

D.A.ペネベイカーと、クライテリオンのDVDプロデューサーが、この名作の復元について語る

サングラスをかけたゴワゴワした灰色の頭髪の男とオフィスで対峙し、人畜無害にもほどがある質問を投げかけられた時のことを、D.A.ペネベイカーは今でもよく覚えている。

「彼はこう聞いてきたよ。『僕のクライアントと一緒にツアーに付いて来るかい?クライアントの名前はボブ・ディランというんだ』。そこで私はなぜかピンときてね」。90歳の映画監督はしゃがれた笑い声を吐き出してから、十八番のラピッド・クリップについて語り始めた。「彼にはまだ1曲しかなかった。『時代は変わる』だ。その曲ならラジオでよく流れていたし、私でも唯一知っている曲だった。その頃私はデイヴ・ランバートというジャズ・ヴォーカリストについての15分間の作品を作ったばかりでね、その時にはこうした短編を一つにまとめて作品にしようと思っていたんだ。そんな商品はまだなかったからね。だからアルバート(・グロスマン、ディランのマネージャー)がツアーに付いてくるかどうかと持ちかけてきた時、私としては、「なんだ、またミュージシャンか。まあ、ちょうどいいかもね」くらいに思っていたんだ。それがこの特別な作品の始まりになった」

その後の歴史が示しているとおり、これは確かに特別な作品の始まりとなった。ペネベイカーは23歳のシンガー・ソングライターが1965年春に行った短い英国ツアーに、特注の同時録音方式の16ミリカメラを持参し、ディランの演奏はもちろん、舞台裏の様子、交渉の様子、ライヴ後のパーティでの悪ふざけ、記者会見、誰かをこき下ろしているシーン、誰かにぶち切れているシーン、熱烈なファンの様子、そしてこれまで記録されたものの中で最も気まずいシーンの一つ、詩人と詩人の対立などを撮影した。ツアーから2年を経て『ドント・ルック・バック』というタイトルでリリースされたこの作品は、フォークを歌う詩人から、ポップ・ミュージックの変革者へと進化しようとしていた時期のディランの映像集の決定版となった。それだけでなく、この作品は現代のロック・ドキュメンタリー作品のひな形となり、史上最も影響力の大きな映画作品と評価されるようになったのである。
Translation by Kuniaki Takahashi

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