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ドキュメンタリー『ボブ・ディラン:ドント・ルック・バック』の驚くべき復元作業の内幕

David Fear | 2016/01/22 17:00

| Photo: (Express Newspapers/Getty) |


制作から50年を経ても、ペネベイカーの微に入り細にわたるタイムカプセルは、驚くべき新鮮さを保っている。クライテリオン社の盛りだくさんなリリースのおかげもあって、『ドント・ルック・バック』はペネベイカーに言わせれば「もともとの録音や撮影よりも高品質で」楽しむことができるようになった。プロデューサーのケン・ヘンドリクスン(1999年にこの作品のDVDが初めて他社からリリースされた時にもかかわっていた人物だ)のこだわりもあって、今回のリリースには、ペネベイカー監督のコメント、ツアー・マネージャー兼ディランの共犯者ボブ・ニューワースのコメント、2006年リリースのボックスセットに収録されていたペネベイカーのアウトテイク映像『ツアー65再訪』が追加されている。今回のリリースにはさらに、「ダイレクト・シネマ」方式の産みの親であるペネベイカーの、次のような初期の作品も収録されている。前述のジャズミュージシャンの短編『ランバート&コー(Lambert & Co.)』(1964年)、パティ・スミスや評論家グレイス・マーカスのコメント、『ドント・ルック・バック』の未収録シーケンス集『スナップショッツ・フロム・ザ・ツアー(Snapshots From the Tour)』などだ。



ただ、今回のDVD/Blu-rayリリースで特筆すべき点は、オーディオの復元である。むかしの映画作品にはしばしば、モノラルトラックを広げたり回したりする「擬似ステレオ」が使われているのだが(以前のDVDリリースの「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」の冒頭部分を聞いてみてほしい。ベースラインが左右のスピーカーを行ったり来たりしているのがわかるだろう)、それを修正する地道な作業が行われたのだ。こうした作業は、クライテリオンのオーディオ・スーパーヴァイザーであるライアン・ハリングス(Ryan Hullings)が『ドント・ルック・バック』素材の「聖杯」と呼ぶ、ペネベイカーの保管庫に残されている4分の1インチの磁気マスターテープに立ち返って行う必要があった。「ペネベイカーはマスターを適切に保管していたので、物理的な状態はとてもよかった」とハリングスはメール取材に答えている。「ただ問題は、これらのテープが、60年代中盤のごく短い時期に使われていた。特別なバージョンのフェアチャイルド・シンク方式で録音されていたために、今のテープヘッドでは読み取ることができないということだった。私は、誰かオーディオ変換をしてくれる人はいないかと、ニューヨーク中を探し回った。そうでないと、この貴重な素材を州外に持ち出さなくてはいけなくなる。でも、私は助けてくれる人を見つけ出すことができなかった」
Translation by Kuniaki Takahashi

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