ショーン・ペンが語る:麻薬王エル・チャポとの会談(後編)


ーもしあなたに人としての自分を説明しろと頼んだら、あなたがホアキン・グスマンではなく、彼を世界で他の誰よりも良く知る人物のふりをしろと言ったら、自分をどう説明するか?

そうだな。もし彼を知っていたら、尊敬の気持ちを込め、私の視点からこう言う。彼はどんな意味においてもドラブルを進んで求める人ではないと。どんな意味でも。

私たちがメキシコの山岳地帯を訪れたあの遅い夜以降、彼の牧場に包囲攻撃が行われたがそれは容赦ないものだった。そこは戦争地帯だった。海軍のヘリコプターが空爆し、部隊を送り込む。銃を携えたシナロアカルテルの部隊によってヘリコプターが撃ち落とされ、海軍兵が殺された。カルテルの兵士たちも殺された。農民たちは殺害されるか、強制退去させられた。エル・チャポはグラテマラ、またはさらに遠く南米に逃亡したという噂が流れた。しかしそうではない。彼は自分が生まれ育った場所にいた。2016年1月8日(金)、それは起きた。彼は捕獲され、生きたまま逮捕された。

私はあの夜のことを考える。嵐の前の静けさを。そしてある男とともに過ごした、この世のものとは思えない経験を。彼の生きる現実は極めて超現実的であるにも関わらず、彼はとても穏やかに見えた。私は実現させたいと望んでいた綿密なインタビューをすることができなかった。私にとって簡単すぎてやりがいがないチェスではなかったし、その逆でもない。しかしおそらく、少なくとも私は反対側から垣間見た。それは私にとって悪魔化の無言劇の肯定だった。この劇は1人の悪役を捕獲、もしくは逮捕するために異常なほどの焦点を資産に当てることを求めた。

しかし現在、シナロアにはおもちゃのペソの紙幣を描いている小さな男の子たちがいる。彼らの前に生きた父や祖父は、このおもちゃのペソを本当のドルに変身させる手段として彼らが知っていた、唯一のものを収穫していた。
彼らは不思議に思っている。私たちが、自分たちの子ども、友人、隣人、上司や銀行、兄弟姉妹がこの忌々しいものに金を出すことに怒っているのを。枠組みの変化も、中毒という経済学と病に対する理解もなければ、メキシコとアメリカの親たちは、夜友達と出かける10代の子どもたちにする質問の基準を変えるという危険を冒すようになるだろう。別れ際に「今晩はどこに出かけるの?」ではなく「今晩、あなたはどこで死ぬの?」と聞くことになるのだ。

エル・チャポ? 私は確信している。シナロアカルテルが次の荷でアメリカにエル・チャポ自身を送り届けるのは、それほど先のことではないだろう。

俳優、ライター、監督であるショーン・ペンはこれまでハイチ、イラク、イラン、ヴェネズエラ、キューバの第一線から記事を書いてきた。彼はこの記事をシカゴで殺害された若者の両親たち、ロドリゴ・ララ・ボニラ、公僕たち、父親、そして英雄たちに捧げることを望んでいる。


本国オリジナル記事は以下
El Chapo Speaks

Translation by Yoko Nagasaka

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