ショーン・ペンが語る:麻薬王エル・チャポとの会談(後編)

SEAN PENN | 2016/01/20 18:00

| ホアキン・アルチバルド・グスマン・ロエーラ、通称エル・チャポ。彼が所在を明かさずに送ってきたビデオインタビューである。 |


その後何週間か、私はエル・チャポに連絡を取ろうと試みる。その間に軍と法執行機関による大規模な捜索により何百人もが逮捕、拿捕され、カルテルのメンバーのうち数人がアメリカに引き渡される。新興の麻薬ギャング団であるCJNG(ジャリスコ・ニュージェネレーション・カルテル)がエル・チャポの刑務所からの脱出に関与していると報じられる。そのCJNGが事実上、シナロアカルテルの自警団的な部隊になるであろうという報道に政府は懸念を募らせる。言い換えればこの騒動で、私たちとカルテルとの仲介をしてくれていた機関は基本的に連絡が取れなくなったか、おそらく逮捕されたか殺されたのだった。

とうとう、ケイトがブラックベリーメッセージのデバイスのウェブを通し、再度連絡手段を確保することに成功する。しかし法の施行と監視が極めて強化されていた。私は、麻薬取締局が実際、私たちがメキシコに旅行をしていたことも察知していたという信用できる情報まで手に入れた。今メキシコへのフライトを予約すれば、間違いなく危険を引き起こすだろう。私は友達の車のトランクに身を潜めて、待機しているレンタカーのところまで運んでもらう計画を立てる。それから私はレンタカーを運転しロサンゼルスからアリゾナのユマに行く。そして国境を越え、メキシコのロスアルゴドネスに入る。私はこの国境地点をよく知っている。書類はチェックされないし、車両は検査を受けずに通過できる。それから国境から80マイルほど先の砂漠まで車を走らせる。そしてエル・ゴルフォ・デ・サンタ・クララの村でカルテルの飛行機と落ち合い、エル・チャポのところまで連れて行ってもらう。しかしケイトはもし私がそのような旅をするのなら、彼女も一緒に行かなくてはいけないと繰り返す。この経路は比較的安全だ。しかし、麻薬組織が支配しているいくつか地域があり、そのなかにはシナロアカルテルに友好的ではない組織もある。またその経路を前回車で通ったときには軍の検問所が2か所あった。アメリカ人の男がメキシコの映画スターと一緒にドライブをするというのは多くの人目を引くだろう。しかしケイトに他の手立てはない。あらゆる面において危険性が利点を上回ることが明らかになる。私たちは代わりにブラックベリーメッセージで彼に質問を送ることにする。エル・チャポは答えをビデオテープに録画することに同意する。その場に立ち会えないから、私は質問の場を取り仕切ることも、彼の精巧な答えにさらに突っ込んで問うこともできない。さらにスペイン語に翻訳しなくてはならないので、質問を先に送ることになる。意外なことにエル・チャポは何百もの兵士や仲間と常に連絡を取っているが、どうやらその中に英後を話すものは一人もいないのだ。

ビデオを受け取れずに終わる日が続くと、ケイトはその1日の終わりにまだ1日しか経っていないと私を安心させた。しかしエル・チャポは毎晩彼女に連絡し、もっと遅れること、そして明らかな疑いを伝えていた。それは私の調査に対してではなく、彼自身を撮影する方法についてのようだった。「ケイト、はっきり言わせてくれ。この男は、少なくとも50カ国にネットワークを持ち、何十億ドル規模のビジネスを動かしている。それなのに、ジャングルで彼と一緒にいるやつらの中にこのくだらない英語を話すやつが1人もいないっていうわけか? 今、君は彼のブラックベリーメッセージの調子が悪いと言っている。彼はいまいましいコンピューターにアクセスできないというわけか? 自分でビデオを撮り、それをアメリカに密輸する技術的な能力がないと言っているのか?」
Translation by Yoko Nagasaka

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