『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が絶大な支持を集める理由

言い換えれば、大昔のロマンと現代のリアリティをつなぐ未来のヴィジョンという構図は、決してルーカスが意図したものではなかったということだ。だからこそ、すべてのエピソードの冒頭でには「遥か昔」というナレーションが挿入される。だからこそ、4作目で初めて描かれる物語の序章は、あらゆる場面にどこかぎこちなさがある。だからこそ、最新技術の駆使を念頭に置いた新三部作は、最初から失敗することが運命付けられていた。新三部作に欠けていたもの、それは「すべては歴史の一部」であるという感覚だ。

『フォースの覚醒』は疑いなく、『スター・ウォーズ』の歴史の一部だ。一瞬たりともその感覚が揺らぐことはない。

Lucas FIlms

J・J・エイブラムスは映画監督として並外れた才能を持っているわけではない。彼は人々の想像力を刺激するマーケターであり(昨年10月、本誌は彼を「アルフレッド・ヒッチコック以来最大のハイプ」と称した)、物語を描くことよりも、ストーリーが持つ魅力を理解する能力に長けている。彼の作品では、アクションのシーン(タコダナの戦いなど)に物足りなさを感じたり、謎が未解決のまま残されたり、難解な場面構成に視聴者がついていけないことも少なくない。
(レイとフィンがミレニアム・ファルコンを見つけ出すが、その後ラスターに襲われるくだりは最たる例だろう)

しかし『フォースの覚醒』が必要としていたのはスティーヴン・スピルバーグではない。それは『スター・ウォーズ』を客観的に捉えることができるクリスチャン・ベールのような人物であり、ルーク・スカイウォーカーがお粗末な存在であることを承知した上で、このシリーズを新たな境地へと導く精神的支柱のような人物であった。そして何より、スポンサーから巨額の制作費を獲得できる、実績のある人物でなくてはならなかった。

Translation by Masaaki Yoshida

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