音楽史上最高のプログレ・ロック・アルバム50選

15. キング・クリムゾン『レッド』(1974年)

多くのプログレ・ロック界のバンドと同じように、キング・クリムゾンもイングランドの牧歌的な幻想曲の作り手の集まりから始まったが、ほかのバンドに比べて精神分裂病気質が強かった。ギターの教祖ロバート・フリップは『レッド』によって、自分のアプローチから質の悪い過去の遺物にすぎない60年代の要素を排除し、プログレが今までに聴いたことのないような骨までしびれるほどに重い音楽を演奏するトリオに変化した。ビル・ブルーフォードが叩き出すビートのジャングルとジョン・ウェットンの低俗な理論立てをぶった切るフリップのノコギリのようなギターの抽象概念から繰り出す音は、パワートリオの意義を明確にした。カート・コバーンがこのアルバムを研究しノートを作っていたという噂があるが、そうだとしても想像に難くない。最終的にこのアルバムの強烈さは内部破裂し、フリップはその後すぐに精神的な道を辿るためにバンドを解散した。そして数年後ブルーフォードとバンドを再結成することになるが、このアルバムほど力強いものではできなかった。by W.H.

14. ジェネシス『フォックストロット』(1972年)

ほぼ間違いなく、ジェネシス初の偉大なアルバム『フォックストロット』は常軌を逸した世界観と1971年の『怪奇骨董音楽箱』の交響曲のような壮大さを取り込み、より一貫性のある作詞作曲とより乱暴な音楽的アタックで自分たちの価値を引き上げた。また、アルバムを支える力強いオープニング曲であるUFOがもたらしたようなメロトロン幻想曲「ウォッチャー・オブ・ザ・スカイズ」と、以後何年もジェネシスのライヴのセットリストで目玉となった23分間のクロージング曲「サパーズ・レディ」のプログレ・ロック代表作の2曲をジェネシスのカノンにつけ加えた。フロントマンのピーター・ガブリエルが体験した不吉な超常現象から一部インスピレーションを受けて作られたこの魅力的な7部構成の組曲は、聖書やギリシア神話からの膨大なイメージやバンドによる最も大胆な演奏法や風変わりな拍子記号の多用などの手法が示されており、例えば「アポカリプス・イン9/8」のセクションではその特徴が顕著だ。by D.E.

13. ピンク・フロイド『アニマルズ』(1977年)

ロジャー・ウォーターズが立て続けにリリースしたコンセプト・アルバムのうち3作目の『アニマルズ』は、ジョージ・オーウェルの『動物農場』からおおまかな着想を得ており、スターリング主義に対するオーウェルの批判の代わりに、マーガレット・サッチャーが英国首相在任中の資本主義による抑圧に対する痛烈な批判を繰り広げた。デヴィッド・ギルモアが処理済みのサウンドの殺風景なパノラマのなかで演奏するとても素晴らしいブルースで、バンドは激しく抗議色の強い音楽を披露する「時代遅れの」ロックの縮図であるとセックス・ピストルズなどのパンク・ロッカーからバカにされた。オープニングとクロージングを担う穏やかなアコースティック曲「翼を持った豚」の間に長い3つの曲を入れて構成された『アニマルズ』は、ピンク・フロイド所有のスタジオでレコーディングを行った初めてのアルバムでもある。by R.G.

12. エマーソン、レイク&パーマー『恐怖の頭脳改革』(1973年)

プログレ・ロック過剰摂取者にとって、このパワートリオは大皿に載ったケーキみたいに並外れた存在だった。彼らはキース・エマーソンのキーボード・ショールーム、カール・パーマーのエンジンつきで回転する巨大なドラムキット、フル・オーケストラと合唱団を従えたスポーツ・アリーナでのライヴなど特異なことをやってきたからだ。しかしこのアルバムでは、仰々しさと華麗さのバランスが巧みに取られていた。『恐怖の頭脳改革』は、ウィリアム・ブレイクの『エルサレム』に気品あるアレンジを加えた英国詩人の空想家スタイルを全速力で展開する。それからファンキーなバロック調のフォークロック(「スティル...ユー・ターン・ミー・オン」)、20世紀のアルゼンチンの作曲家アルベルト・ヒナステラによるピアノ協奏曲に乗せたエマーソンの卓越したリフ(「トッカータ」)、30分近い長さがある複数部構成のディストピア幻想曲「悪の教典#9」へと進んでいく。「悪の教典#9」の中毒作用のあるエンタテインメント(「ジプシーの女王が/ワセリンで光り輝きながら/ギロチンの上でパフォーマンスする」といったサイドショー)は、有害なコンピュータ知能や現代の監視的なインターウェブ時代から私たちの気持ちを紛らわせてくれる。未来を予見したとてつもないロックンロールだった。by W.H.

11. ラッシュ『神々の戦い』(1978年)

ラッシュは80年代に複数部構成のコンセプト作品から離れていったが、このトリオは70年代が終わる前に2枚の卓越したコンセプト・アルバムを世に放った。「シグナスX-1 第2巻「神々の戦い」」(もちろん、1997年の『フェアウェル・トゥ・キングス』のエンディング曲「シグナスX-1 第1巻「航海」」の続編である)は、18分にわたる神話のような物語のシリーズで軽やかなドラム演奏に適した変化をもたらしながら『神々の戦い』の先頭を切り、ギタリストのアレックス・ライフソンが見たシュールな夢から着想を得た複雑な9分間のインスト「ラ・ヴィラ・ストランジアート」でアルバムが締めくくられている。この2曲の間に配置された「サーカムスタンシズ」と「ザ・トゥリーズ」はどちらも、バンドがその後の10年間で採用することになる、より短くキレがあるのに哲学的な要素もあるパワーコードが噴出するようなスタイルに傾いていた。「このアルバムを制作するきっかけとなったものは全部、それぞれ別の方向からやって来た」と、ゲディ・リーは数年後に語った。by D.E.

Translation by Deluca Shizuka

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE