ニュー・オーダー、ダンスロックへの回帰に成功した内部事情

物事が本格的に動き始めたのは、有名なダンス・ミュージックのバックグラウンドを持ったケミカル・ブラザーズのトム・ローランズを共同制作者に迎えた頃だった。「俺たちは自分たちよりもシンセサイザーに詳しいヤツを入れたほうがいいんじゃないかと考え、思いつく限りそれは彼だけだった」と、モリスは笑いながら話す。「俺たちは、トムのアイデアで「シンギュラリティ」を制作し、音楽なしで歌詞だけ先にできていた「アンラーン・ディス・ヘイトレッド」も一緒に作った」。

彼らがライヴで演奏するのを心地よいと感じた初めての歌が「シンギュラリティ」だった。バンドは2014年の春に南米でこの曲を初公開したが、少なくとも公開した時点では、彼らはまだ曲を披露する覚悟ができていなかった。「俺たちはこの曲に正式なタイトルもつけていなかった。ドロップDチューニングのギターで書かれた曲だから、暫定的に「ドロップ・ザ・ギター」と呼んでいただけ」とサムナーは思い起こす。「俺は最初のギグで『いまいましいタイトルをつけないと。ちょっと座ってこの曲のタイトルを考えないか?』とスティーヴに話した。だけどダメだった。だから初めて演奏した時、誰かがセットリストをもらったはずだ。翌日、インターネットで『ニュー・オーダーが素晴らしい新曲を披露した。「ドロップ・ザ・ギター」という曲だ』と広まってしまった。マジかよ。その晩に、「シンギュラリティ」というタイトルを考えた。俺の理解では人工知能が人間の知能を超える段階という意味だ。それから「シンギュラリティ」には宇宙の始まりという意味もある」。ここから始まったのだ。

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『ミュージック・コンプリート』の指揮を執るニュー・オーダーのバーナード・サムナーは述べる、「シンセサイザーやエレクトロニクスに回帰するのは今しかないという感じだった」。写真:Paul R. Giunta/Getty

Translation by Shizuka De Luca

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