9位 『未知との遭遇』(77)
スティーヴン・スピルバーグが大ヒット作『ジョーズ』の後に放ったこの傑作を、あなたが最後に観たのはいつのことだったろうか? 長々と描かれるリチャード・ドレイファスとテリー・ガー演じる夫婦の喧嘩シーンを覚えているだろうか? クライマックスシーンにたどり着くまで、スピルバーグにかなり焦らされたことは覚えているだろうか? ドレイファスがいとも簡単に宇宙船に乗ってしまったことは? 同じく77年に公開されたSF大作『スター・ウォーズ』とは異なり、『未知との遭遇』を傑作たらしめているのは、我々をゆっくりと時間をかけて70年代らしいパラノイアとリーダーズ・ダイジェスト誌由来の神秘主義の渦の中に埋没させた後で、マンハッタン島と同じ大きさのマザーシップを降臨させてカタルシスをもたらすところにある。オーソン・ウェルズの「火星人襲来事件」から40年後、スピルバーグは我々に友好的な宇宙人との遭遇の機会を与えてくれた。もちろん、無邪気な少年誘拐事件とキーボードを使った熱狂的な交信の試み、フランソワ・トリュフォーでさえ手なずける優しい目をした発光する存在も一緒に。(EH)


8位『フェイズ IV/戦慄!昆虫パニック』(74)
映画のタイトルデザインで知られる伝説のグラフィックデザイナー、ソール・バス唯一の長編監督作品。高い知能を持つアリの集団が世界征服を企むというストーリーだが、クリーチャー&パニック映画というよりも、イカしたアリ学者たちと一緒にマッシュルームでハイになれる映画だと言ったほうがいいかもしれない。アリたちは、砂漠に建てられた研究所に科学者たちを捕らえるが、彼らの目的は人類を絶滅させることではなく、文字通り「コロニー化」することにあった。近年になって再発見された本作の「失われたエンディング」でその事実が描き出されるが、このパートのめくるめくモンタージュは、『2001年宇宙の旅』の第3部「木星 そして無限の宇宙の彼方へ」にも決して引けを取らない。(SA)


7位 『サイレント・ランニング』(72)
この映画にはあらゆる要素が詰まっている。もちろん、その要素とは、銀河系を股にかける自然保護論者で殺人者の長髪のブルース・ダーンが、ドロイドたちとポーカーをやったり、ウサギに話しかけたり、サラダについて熱く語ったりすることを含めての話だ。特撮マンのダグラス・トランブルが監督デビューを果たした『サイレント・ランニング』は、巨大な貨物宇宙船内に残された最後のグリーンハウスの緑を丹精込めて育てていた自然保護論者が、グリーンハウスの破壊命令に抵抗するという、一見陰鬱な環境保護の寓話である。道徳的な観点からすれば、自らの窮状をイカれた様子でぶちまけるダーンには、独善性と罪悪感、そして前述のドロイドだけが残る暗い未来しか見えない。だが、少なくともその狂気に満ちた取り組みは、のちの『スター・ウォーズ』によちよち歩く愛らしいロボットの作り方を多少なりとも伝授し、コメディシリーズ『ミステリー・サイエンス・シアター3000』には、宇宙船内の宇宙飛行士とロボットが暇つぶしにB級SF映画を観ながらツッコミを入れ続けるというコンセプトを与えもしたのだ。(EH)

Translation by Mari Kiyomiya

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