ケヴィン・ベーコンが語る、人生を変えた10本の映画たち

Photo: (Focus)

ケヴィン・ベーコンが映画『スパイナル・タップ』『ラスト・ワルツ』を始め、彼を俳優業へと導いた作品について語った。

スマートフォンを熱心に見つめ、お茶を飲みながらゆったりとした足取りで部屋に入ってきたケヴィン・ベーコンを見て、君は2つのことに気がつく。1つは信じられないくらい体を鍛えているように見えること。57歳にしては、というだけではない。いくつかの年齢を感じさせるサインはあるものの、彼は今でも『フットルース』で小さな独裁的な街で踊っていた少年のように、『トレマーズ』でグラボイドに立ち向かったダイナーの仲間や便利屋たちとフライドポテトの上にグレイビーソースをかける利点について議論していた若者のように見えるのだ。

2点目は最新映画で彼が演じた役—非常に面白いインディーズ系の小作品『Cop Car(原題)』でパトカーを乱暴に乗り回す子供達を追いかける汚職警官だ—の最大の特徴がどこにも見当たらないということだ。「ああ、ヒゲのやつかい?」とケヴィンは反社会的な警官に扮するにあたって顔に付けていた、恐ろしく古臭いバート・レイノルズ風の口ヒゲのことをこう呼び、尋ねてきた。「あのヒゲのやつも隣の隣くらいの部屋でインタビューを受けているよ。君もきっとあのヒゲに映画について質問したいだろうね」

実際のところ、多くの作品を生み出してきた映画スターにしてミュージシャンでもあるケヴィンに私たちが聞きたかったのは、彼の好きな映画についてだった。大人になる過程において彼の根幹に響いた作品、映画俳優になりたいと思うようになったきっかけになった作品、彼が最近評価している作品や何度も繰り返し見ている作品。これがケヴィン・ベーコン自身が挙げた、人生における10本の映画である。さあみんな、攻撃の準備を始めよう。

『スパイナル・タップ』(1984年)
「これはずっと好きな作品なんだ。この作品の素晴らしい点の1つは、見るとひどいくらい馬鹿げていると思うところだ。そして自分たちもバンド(ザ・ベーコン・ブラザーズ)を結成してしまい、そしてある日突然、それで暮らしているっていうことなんだよ(笑)。「ボストンのコンサートがキャンセルになったけど、心配することはないよ。それほど大きなカレッジタウンじゃないからね」っていう世界を自分自身が生きているんだ。僕はこのセリフを引用して歌にしなくてはいけなかった。言っている意味がわかるかい? 僕にとってはとても笑えるセリフなんだ。
クリストファー・ゲストがこの作品に出演した数年後、彼と仕事をしたんだ。『ケビン・ベーコンの ハリウッドに挑戦!』(1989年)という、低予算のインディペンデンス映画を作ろうとする男を描いた作品だ。昨日(『Cop Car』の)監督のジョン・ワッツとインタビューを受けたんだけど、誰かがジョンに僕の映画で好きなのは何かって訪ねた。するとジョンはこの作品を挙げたんだ。笑うしかなかったよ。僕は「もちろんそうだろう。あれは君にとっての『スパイナル・タップ』だからね。君は今まさに、この映画を生きているんだと言ったよ」

『真夜中のカーボーイ』(1969年)
「この映画には大きな影響を受けた。僕が俳優になりたいと思った理由の大部分を占めているのはこの作品だ。近所に封切館の次か、次の次に映画を上映する、1ドルで見られる映画館がいくつかあって、その1つで見たんだ。公開されてしばらくたってから見たんだけど「どうやってこのホームレスの男を映画に出演させたんだろう。このカーボーイもクールじゃないな」って思ったよ(笑)。そしてその少し後に『卒業』や『帰郷』を見て「これが俳優のやることなんだ」と思った。僕が人生で何をやりたいかという点でダスティン・ホフマンとジョン・ボイドから受けた影響は非常に大きかった。まるで「オーケー、よくわかった。僕はこういう種類の俳優になりたいんだ」って感じだった」

Translation by Yoko Nagasaka

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