2016年アカデミー賞、12の意外な脱落作品

7.アーロン・ソーキン、最優秀脚色賞『スティーブ・ジョブズ』
アーロン・ソーキンは、カジュアル映画のファンでも名前ぐらいは知っている脚本家であり、アカデミー賞では常に最有力候補者だ。たとえそれが、単に彼の脚本だとすぐに分かるからという理由であったとしても。ハイコンセプト・ストラクチャーで21世紀のひとりの偉大な人物を捉えた彼の脚本『スティーブ・ジョブズ』は、映画の何かしらに観客に通じるものが欠けており、彼らの声に最も責任あるソーキンは、必然的に船もろとも沈んでしまうことになった。

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Sicario Lionsgate

8.『ボーダーライン』、最優秀作品賞
ドゥニ・ヴィルヌーブの強力なスリラー。予想外にヒットしたこの映画は、メキシコとアメリカの国境で、両サイドが狂気に満ちていくという内容だ。出だしから観客ののど元を掴んで地獄へと引きずり込んでいく。ジョッシュ・ブローリン、エミリー・ブラント、そして変わり者で危険なベニチオ・ベル・トロの最高に力強い演技、また、究極の天才撮影監督レジェンド、ロジャー・ディーキンスのおかげで、まれな舞台設定が実現した『ボーダーライン』は、映画自体を騒動に巻き込んでしまうかもしれないタイプの映画のように思われる。なぜ脱落したのかは説明し難いが、麻薬戦争において道理にかなっておらず(当然だが)、まるで実際よりも残忍であるかのような感じを投票者に残したのではないだろうか。

9.ジョニー・デップ、主演男優賞『ブラック・スキャンダル』
この脱落は、どのアカデミー賞を受賞するかを予想する前に、映画を観るべきだと人々に気づかせるためではないだろうか。悪名高い暴力団員ホワイティ・バルジャーに扮するデップの演技は、彼のメーキャップとかすかなアクセントが垣間見えた瞬間、オスカーへのヒントとなった。だが、オスカーシーズンが事実上始まり、『ブラック・スキャンダル』が9月に劇場公開された際、つまらない脚本は秋の公開だけでは乗り切れなことを、観客は身をもって知らされた。興奮はあっという間に冷めやり、これはバルジャーが密告者だと非難している映画なのだと思うだろう。

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マーロン・ブランド 提供:Hulton Archive/Getty

Translation by Kayoko Uchiyama

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