アルカが語る、ビョークとのコラボ、性の葛藤、衝撃的なニューアルバム

ビョークとのコラボレーションは、『ゼン』、そして『ミュータント』の制作にどのように影響したと思いますか?

ビョークと初めて会った時、同じ空間で同じ空気を共有する相手として理想的な存在だと感じた。彼女のような人には出会ったことがなかったんだ。言葉で表現するのは難しいけどね。僕は10歳の頃からビョークの大ファンで、彼女の音楽は僕の作風に多大な影響を及ぼしていると思う。音楽との接し方や感じ方を、僕は彼女の音楽から学んだんだ。

ビョークは正真正銘の天才だよ。彼女ほど自分自身を表現する手段を熟知している人には出会ったことがない。彼女はストリングスアレンジも自分で手がけるけど、コラボレーション相手へのリスペクトを決して忘れない。『ヴァルニキュラ』の制作に携われたことは、僕にとってものすごく大きな経験だった。とても脆くて、美しいレコードだよ。彼女は大切な人を失った悲しみに、凛とした姿勢で真正面から向き合っているんだ。彼女と一緒に仕事ができたことは、僕の人生において最も素晴らしい出来事のひとつだった。

何か面白いエピソードを話してあげたいところだけど、特にそういうのはないんだ。多くのことを彼女から学んだんだけどね。ミュージシャンとしてプロデューサーとしても、キャリアは僕よりもずっと長いから、そばにいるだけですごく刺激を受けた。彼女との出会いがなければ、『ゼン』も『ミュータント』も全然違う内容になっていたかもしれない。そもそもビョークの音楽がなければ、今の自分は決してないだろうからね。それぐらい彼女は僕にとって大きな存在なんだ。意外かもしれないけど、スタジオでの作業ではいつも笑いが絶えなかった。『ヴァルニキュラ』の作風からはイメージできないだろうけどね。すごく親近感を覚えていたし、同じ空間に生きていると思えたんだ。音楽を作るということが、僕と彼女の心をひとつにしてくれた。あの作品に携われたことは僕の誇りだよ。

―カニエ(・ウエスト)とビョークとの仕事は、あなたのミュージシャンとしての価値観に影響を及ぼしたと思いますか?

その質問に答えるのは難しいね。彼らとの仕事について語るのは構わないけど、それによって自分がどう変わったかを説明すると、なんだか彼らを利用したみたいに思えてしまうからね。そうすることで僕と彼らとのピュアな関係が損なわれてしまうのが嫌なんだ。彼らとは長い時間を共に過ごしたから、その質問に対する答えもすごく長くなってしまうだろうし、簡潔に言葉にすることはできないよ。

Translation by Masaaki Yoshida

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