キューバは次世代のロック一大市場になり得るか?

1990年に東ドイツで、2006年には中国で歴史的なコンサートを開催したストーンズは、かねてキューバ公演の実現を希望していた。ストーンズがキューバでのライヴ開催を交渉していた昨年10月には、ミック・ジャガーがハヴァナを訪問、ほとんど気づかれることないまま街をかっ歩し、アフロ・キューバン音楽の地下クラブに姿を見せていた。そのクラブでバンドが『サティスファクション』のルンバ・バージョンを演奏し始めると、ジャガーはダンスフロアで踊っていたのだという。


2015年10月にキューバを訪れたミック・ジャガー(Mick Jagger/Twitterより)





ストーンズのキューバ公演の問題点は、メグレンによると「資金調達」だったという。「ストーンズは、このコンサートを完全に無料にして、一般市民向けに行いたいと希望していた。VIPエリアは設けない方針だった」。バンドのマネジメントは、キューバで芸術や慈善事業に資金提供を行っているフィラントロピストのグループ、Fundashon Bon Intenshonからの拠出金(金額非公表)を確保、さらにコストをカヴァーするための映画撮影も計画した。それでもこれまでのところ、赤字額は700万ドルに上っている。「我々は文字通り、すべてを持ち込んだ」とメグレンは述べている。「フォークリフトからタワー、世界最大のステージも持ち込んだ。アイスランドのミネラルウォーターを売っている男に頼んで(アイスランディック・グレイシャルという会社のことだ)、自分たち用に4万本の水をキューバに持ち込んだ」。



アメリカがキューバへの渡航制限を緩和して以来、アメリカ人の旅行者が急増している。新しいホテルが開業し、5月には大規模なエレクトロニック・ミュージックのイヴェント、Mananaフェスティバルがサンティアーゴ・デ・クーバで開催される。もっとも、レヴィンとしては、あまり急激な変化は見たくないのだという。「我々は何とかして、本物のキューバ経験を守ろうとしているんだ」と彼は語っている。「キューバ人はインターネットやスマートフォンの奴隷にはなっていない。濃密なコミュニケーションが、情熱的な恋が、グループでの大笑いがあるんだ。おそらくこういうことを守っていくことが求められているんだと思っている」

Translation by Kuniaki Takahashi

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