なぜロバート・メイプルソープは人々の記憶に残り続けるのか



このドキュメンタリーフィルムのプロデューサーたちはメイプルソープを単なる挑発的な人物として描くのではなく、彼の様々な側面を捉えようとしている。「もちろん彼は真面目なアーティストになることを望んでいた。彼は自分の芸術に対してとてもひたむきだった」とベイリーは語る。「そして同時に面白い写真を撮ろうとしたんだ。『Man in a Polyester Suit』も『Whip up the Butt』も面白い作品だ。『Devil’s Horns From the Party Store Down the Road』だって面白い! 真面目なアーティストであることと面白くあることは両立できない、なんてことはありえないと言っているようだ」

プロデューサーたちはパティ・スミスやデボラ・ハリーなどメイプルソープ以外の人々も登場させた。彼らはともすれば不安にさせるような映像に陽気さを与えている。スミスは回想録『ジャスト・キッズ』でメイプルソープとの関係について書いた。遺された記録映像の中にはこのしなやかな詩人にしてロッカーでもある彼女が、詩を朗唱する姿があり、メイプルソープによるポートレイトの中にもいる。スミスのアルバム『ホーセス』のジャケットに使われたポートレイトもメイプルソープの作品である。ナレーションの一部は現存するインタビューから抜粋された。スミスはこの若い恋人がどのようにパトロンを探してチェルシーホテルの中を彷徨い歩き、作品を作ろうとしていたのか語る。またもう一人のアーティスト、作家のフラン・レボヴィッツは彼女独特の攻撃的な言い方でメイプルソープを回想する。「彼は破滅したキューピッドのように見えた。彼は自分の魅力を信じきっていた」とレボヴィッツは言う。「彼は自分の魅力を最大限に活用していた」






Translation by Yoko Nagasaka

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