プリンス、知られざる慈善家としての一面とは




「プリンスはそうした仕掛けをしょっちゅうやっていた。彼に会えると考えているのか、それが当然だと思っているのか、期待しているのかは別として、権力者たちはやってきた」とジョーンズは明かしている。「そして楽屋で1時間ほど、対立勢力と鉢合わせになって、結局友達になったりする。プリンスとは一生会えない。プリンスはそんなことをいつも仕掛けていた」

プリンスが亡くなってからというもの、ジョーンズはプリンスが何百人もの人に対して支援の手を差し伸べていたことを知ったという。何かネガティヴなニュースを読むと(「プリンスはニュースおたくだった」とジョーンズは述べている)、どうにかしようと考えをめぐらせたのだ。「自分の人脈をとても静かに動員して、物事に介入していた」とジョーンズは語る。「彼が亡くなるまで、このことがほとんど知られていないことも、私は理解していなかった」

ジョーンズは、プリンスがさまざまな慈善活動を秘密にしていたのは、それが自身の信念だったから、そして自分の善行をひけらかすというのは品に欠けることだからだろうと考えている。「プリンスは純粋な天才性を音楽を通じて表現していた。だから人はプリンスのことを、音楽の天才だと考えている」とジョーンズは言う。「でもそれは違う。彼は天才そのものであって、その天才性をたまたま音楽で表現をしたけれど、彼なら何を通してでも自分の天才性を表現できたはずなのだ」





ファンにはあまり広く知られていなかったとしても、社会貢献はプリンスの全存在に染みついていた関心事だったとジョーンズは語っている。「人々が誤解しているのは、プリンスは何もクールであろうとしてクールにしていたわけでもないし、ミステリアスであろうとしてミステリアスにしていたわけでもない。孤高さが自己目的化していたわけでもないんだ」と彼は続ける。「彼のパーソナリティのそうした側面も、彼が世界を、宇宙を、神を、人々を、そしてあらゆることを理解しようとしていたからこそなんだ。彼は、世界を理解すれば、世界を変えていくことができると考えていた。世界を変えたいのは、自分が有名で金持ちになれると思ったからではない。そんなことは彼はもう20歳までに実現していた。あなたなら、そこから30年強をどう生きるのかということだ」

「プリンスの持っていたミュージシャンの豊富な人脈と同じように、彼には知識人の豊富な人脈、政治活動家の豊富な人脈、社会変革者の豊富な人脈があった」とジョーンズは続ける。「音楽の世界で彼がバンドリーダーだったように、社会問題の世界でも彼はバンドリーダーだった」

フィランソロピーはプリンスの性にあっていたのだ。「彼は人に対する鋭い洞察力を持っていた」とジョーンズは語っている。「もし彼が政治家になろうとしたなら、地球の王様になっていたんじゃないかと思うよ」

Translation by Kuniaki Takahashi

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