パリ・ブリュッセルで起きたISISテロ後の欧州の生活

ブリュッセル連続テロ事件の影響は、それ以前の攻撃も同様だが2方向に分かれた。一方では欧州における価値観の声が激しくなるであろうことは間違いがなかった。ベルギーの連邦議会は、すぐに新たに到着する移民たちに欧州の価値観を支持する声明に署名することを要求する法律を提案した。ブリュッセルや各地で無差別に移民を攻撃するネオナチは不要なものだ。しかしながら、このような声明に署名をするということは、自らを画一化した暴徒集団は恐らく欧州の価値体系の中で昔からある一部分なのであろう。

そしてもう一方では、テロ攻撃は長らく欧州に存在する非欧州人の排斥という伝統を強固なものにする。欧州の人々は、ちょうど道の下で起こっているか、もしくは人気のある休暇の旅行先の沖で溺死している難民を完全に無視することができる。その本能がフェンスを建て(現在、ハンガリーとマケドニアに建てられている)、馴染みの深い場所の安全性に閉じこもり、洗練された地域の伝統や料理、十分に習熟された上流階級の国民同士で知的な交流を交わし、よそ者を締め出し、自分たちの面倒しか見なくなるようになる─別の言葉で言い換えれば、EUに加盟していないスイスのようになるということだ。テロリストたちは、その有刺鉄線を張った柵の後ろにある"価値観"の、内部対立が起こることを望んでいる。

欧州における全ての協定は不安定なものだ。それは上層部の調和に依存しており、とりわけ安全保障や手続きに関しては役割を十分に果たしていない。もし欧州が政治的あるいは歴史的なプロジェクトとして持続していくためには、ある種の変化が必要であり、その変化の方向は歴史に無関心な欧州本質主義のために排除を進めるのではなく、多様性の受け入れに向けるべきだ。"価値観"を叩き込むことはISISの原理にはほとんど当てはまらなず、将来の不幸を予言するような"価値観"の体系は、「私たち」と「彼ら」という柱に支えられているのだ。

Yuka Ueki

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