バーニー・サンダースの政治革命の未来は?

「地方レベルでは、このような事例がもっと出てくることになる」と、ミッチェルは言う。彼や他のオーガナイザーたちは、今後の選挙運動を通じて地域レベルでの自分たちの力がわかることになるという点で見解が一致している。すでに運動が強い支持を得ている地域の市や州の選挙に関わっていく方針だ。そして、チョーの言う「分散型」の構造に、共有する一連の価値観と民主・共和両党からの厳密な独立を重ね合わせることになる。「私たちに政治階級の友人はまったくいない」と、ミッチェルは私に言った。二大政党の忠実な支持者のことを指している。

ミッチェルは、運動によって、長年政治的に不可能だと思われてきた種類の政策と提案への扉が開かれると予言する。彼はBYP100の「黒人の未来を築くためのアジェンダ」を例に挙げる。その内容には、補償やユニバーサル・ベーシック・インカム(全国民に対する基本所得の給付)が含まれている。活動家たちは「私たちが昨年、対話を動かすのに使った戦術のいくつか」を使って「政治的な筋力」を強めることになると、ミッチェルは言う。

アメリカでは、社会運動は歴史的に選挙の領域を避けてきた。たとえば、オキュパイ運動の活動家たちも現在はサンダースの選挙運動に加わるようになっているが、ズコッティ・パークを占拠した参加者の多くは政治を完全に拒絶していた。これには、いくつかの理由がある。アメリカの特異な選挙法の下で、第三勢力の立候補者──往々にして多くの活動家が望む抜本的な変革を訴える──は、ほとんど選挙から閉め出されてきた(ティーパーティーの卓越性の一端は、周縁からアウトサイダーとして共和党に挑むのではなく、内側から大きな力を振るえたことにある)。そして、逃れることはできないようにみえる「闇の中」の巨大な政治献金の影響力──今回の選挙では6億6540万ドルを超える献金がスーパーPAC(特別政治活動委員会)から各候補に流れている──に、多くの人が幻滅を感じている。サンダース、さらにはトランプ──ともに企業献金を受けていないことを強調している──に対する支持は、新しい何かへの渇望を示している。

しかし、ミレニアル世代が率いる運動は、政治家に対するアンビバレンスを払拭し始めているように見える。では、彼らは何ができるのか。深い欠陥をかかえたアメリカの民主制において、そもそも何が可能なのか。オキュパイ運動に参加し、サンダースを支援する「People for Bernie」(ピープル・フォー・バーニー)を共同で立ち上げたウィニー・ウォンに言わせると、できることはたくさんある。サンダースが唱える「政治革命」を前に進めるには何が必要かという問いに対して、彼女はこう即答する──その勢いは「サンダースの選挙運動からではなく」、人々の運動から生まれることになる。地方レベルの選挙において革新的な候補を支える基盤が、革新の大波を引き起こすことへの道を整えるのだという。フロリダ州のティム・カノーバやネバダ州のルーシー・フロレスのような左派系候補は、識者が「サンダース・デモクラット」と呼ぶ新世代の民主党員の一部であり、そのほとんどは社会運動との明白なつながりはもたないながらも、従来の民主党のあり方に対する深い不信に乗じている。
「People for Bernie」と早くからサンダースを支援していた全米看護師連合(NNU)は、6月半ばにシカゴで予定される「People’s Summit」(ピープルズ・サミット)の主催者として多くの組織とともに名を連ねている。サミットの詳細はまだほとんど不明だが、ウォンは自分が設立に携わった組織を次の段階に導くことが1つの目標だと言っている。

「Eventbrite」のサミットのページによると、「新しいムーブメント・ポリティクス(運動政治)──選挙の立候補者、選挙で選ばれた公職者、組織化された人々が共通のアジェンダの実施に協力するという大衆運動」を生み出すことが目的だという。彼らは今後10年にわたり、「企業の利益よりも人々と地球を優先する経済と民主主義」を築き上げる計画だ。先週末にウェブサイトで公開されたティーザーには、「350.org」「Democratic Socialists of America」「National People’s Action」など20を超えるパートナー組織が列挙されている。

Translation by Mamoru Nagai

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