喫煙シーン・R指定・ヘア解禁、映画倫理委員会 委員長が語る表現の自由とは

By Joe Yokomizo 2016/06月号 P84〜89 |
ローリングストーン日本版 2016年6月号小特集 表現を規制するのは誰か(映画編)
ローリングストーン日本版 2016年6月号小特集
表現を規制するのは誰か(映画編)


2016年2月1日、世界保健機関(WHO)が、喫煙シーンのある映画、ドラマなどが若者の喫煙を助長しているとの調査結果を発表、各国政府に対し、煙草関連映画の鑑賞に関して、年齢制限を設けるなどの対策をするよう勧告を出した。
テレビでは煙草を吸っているシーンは減ってきている。では、映画はどうなのか。そして、映画業界にはどんな規制が存在するのか。WHOの勧告をきっかけに「表現の自由」を改めて考える。

映画倫理委員会の役割とその審査基準
大木圭之介(映画倫理委員会)


日本で上映されるほぼすべての映画において、その公開区分(レイティング)の審査を行う映画倫理委員会(通称、映倫)。
その設立経緯から役割、その規定の変遷までを委員長に語ってもらった。

―映倫は上映作品のレイティングを行う機関だと理解していますが、そもそも何のための、誰のための規制なのでしょうか?

おっしゃる通りで、映倫は公開される作品を四つの区分に分類しますが、内容に関する評価はしません。あくまで映倫の基準に照らし合わせ、その作品がどの区分に当てはまるかを審査します。映画を観て区分を決定する審査部はある種、コンサルタントのような役割があり、製作者側から「(R18ではなく)R15で公開したい」という相談があれば、「この部分を変えればR15になります」といったアドバイスすることもあります。基本的に、内容に関して修正を強要することはありません。電波放送(テレビ、ラジオ)を審査するBPOは、放送されたものを審議しますが、映倫の場合は事前審査なので、内容の修正を強要すれば検閲に当たります。では、何のための規制かというと、戦前は"映画法"があり、戦争中は戦争を否定する映画が作れないなど、権力者におもねった映画でないと作れなかった時代がありました。戦後、新憲法のもと、21条(表現の自由)に触れるため映画法は廃止になった。ところが、映画が昭和30年頃に太陽族映画が流行し、青少年犯罪を助長しているという話が出てきました。科学的な根拠はないのですが「映画法を作るべきではないか」という声が上がったのです。当時の映画界の人は、国の法律のもとで映画を作ることの大変さを身をもって体験していたので、自分たちで機関を作り、社会的責任を果たそうということで映倫を設立しました。

―映画界が自主的に作った機関なんですね。

誰のためかといえば、一つは映画界のためです。表現の自由を確保するためですね。同時に、青少年などを含めた社会的な影響を考えるためです。私たちは映画界のため、そして市民社会のための機関であると考えています。

―では、映倫はWHOによる勧告についてはどう考えているのでしょうか?

現状でも、未成年者の喫煙シーンは審査の対象にしています。ですから、煙草に関して全く規制していないわけではありません。ただ今回のWHOの勧告は、喫煙シーンがある映画は全て成人向けにという話です。行政や政治から、考えてほしいという要望はありませんが、喫煙は社会の関心事ですから、耳を貸さずに放っておいていいとは考えていません。委員会でも議論しましたが、勧告どおりにすることはできない、というのが現段階の結論です。ただ、それは会として公には発表していないんです。なぜ受け入れないかと言えば、今までの映画をご覧になればわかるとおり、喫煙シーンは演出上かなり有力な表現手段です。ただ煙草を吸うというだけではなく、そこにおける人間の心理など、背景にあるさまざまな心象現象や雰囲気を表す演出方法として使われている。そこを制限することが本当にいいのかどうかは甚だ疑問です。これは、私の個人的な意見です。

RECOMMENDED

TREND