新たな反トランプ・キャンペーンを掲げたヒラリー・クリントンの誤算

ビニアCFOのメールから約2ヶ月後の2007年2月、ブランクファインCEOは以下のメールを書いている。

「これらの帳簿はきれいに整理できているか?その他すべての帳簿の猫や犬も直ちに売り払えるのか?」

ここで言う『猫や犬』とは、彼が清算したがっていたモーゲージ担保証券の不良債権を指す。ではいったいどのように清算したのだろうか?彼らは不良債権を顧客へ売ったのである。

『ハドソン』と呼ばれる取引で、ゴールドマンは12億ドルの『猫や犬』を売り払った。ゴールドマンは顧客に対し、自社の資産から売り出していることを隠し「ウォール街からのものだ」と偽っていた。

2007年春頃、不動産市場の崩壊を目前にしてゴールドマンの幹部は焦っていた。その年の5月、ある上級幹部はプレゼンの場で「市場の暴落は目の前に来ている」と述べている。

幹部たちは、彼らの死にかけの金融商品を買い上げてくれるおめでたい顧客を求めて世界中を探し回った。そして彼らは、1億ドルのモーゲージ担保証券を購入するというオーストラリアのヘッジファンドを見つけた。『ティンバーウルフ』と呼ばれるこの取引は60%のリターンが約束されていた。ゴールドマンの幹部たちは究極のいいカモを見つけてほくそ笑んだ。

「まさに鴨が葱を背負って来たようなもんさ」と、ゴールドマンのある営業担当は述べている。取引が完了した数日後、別の幹部は「おい、ティンバーウルフはチョロい取引だったな」という有名なセリフを吐いた。

私はヒラリー・クリントンが大統領選への立候補を表明するずっと以前から約8年間に渡り、2008年のリーマン・ショックにまつわるこの手のひどい話を追求してきた。このレポートもヒラリー・クリントン本人についてではなく、大きな社会的影響力を持ち、彼女を今後押ししている企業群を追求するためのものである。

それらの企業はほとんど、金融危機の責任を逃れている。民主党と共和党のどちらの有力議員も、それらの企業を名指しすることを避けているからである。そしてヒラリー・クリントンも同様に間違った方向へ行こうとしているように思える。金融危機初期の頃に遡って(企業を追求することで)、国民に対して誠実さを示すべきである。

トランプは確かに変人であるが、クリントンの今の戦略は誤っている。自分が金持ちになるまでのストーリーを自由に語るトランプは、支持者を集めている。彼の支持者たちはまた、「ジェブ・ブッシュやヒラリー・クリントンなど政府周辺の政治家たちは企業から多額の献金を受けて汚れている」、というトランプの主張を信じ込んでいる。

ヒラリーと民主党は、今回のように自らの支援者(企業)にまつわる問題でトランプを攻撃すれば、彼のレトリックにまんまと嵌められてしまうだけである。トランプを打倒するには別の手を考えたほうがよい。

共和党の大統領候補指名が確実となったドナルド・トランプの発言の数々を聞けば、彼がどんな人間かがわかるだろう

Translation by Smokva Tokyo

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