1964年のインタビューで、レノンはディランを「世界屈指の才能」と呼ぶなど、再三にわたって惜しみない賛辞を送っているが、その逆のケースはほとんどなかった。レノンはビートルズの『アイム・ア・ルーザー』や『悲しみはぶっ飛ばせ』といった内省的なアコースティック曲が、ディランの作風にインスパイアされたものであることを公言している。そしてビートルズが世界中を席巻する中、ディランはエレクトリック路線を追求し始める。ディランのルーツにはもともとロックンロールがあったとはいえ、エレクトリック路線への転向がビートルズの影響によるものであったことは間違いない。「ビートルズがいかに自身の影響下にあるかということを、ディランは頻繁に口にしていた」ビートルズのツアーマネージャーのニール・アスピノールは、『John Lennon: The Life』の著者のフィリップ・ノーマンにそう話している。「レノンはよくこうこぼしてた。『彼だって俺たちの影響を受けてるけどな』」