ビヨンセ『レモネード』:自らを語ったポップ・クイーン

『レモネード』は、これまでのアルバムの中で最も感情的な激しさを伴った作品だ。だが、ケンドリック・ラマーをフィーチャーした『フリーダム』から、70年代初期のシェールのように得意げに殺人を歌ったカントリー・ソング『ダディ・レッスンズ』まで、音質的にも最も冒険的な作品となっている。ゲストミュージシャンは、ジェイムス・ブレイク(『フォワード』)からザ・ウィークエンド(『6インチ』)に至る幅広さだ。『ドント・ハート・ユアセルフ』ではロック・クイーンぶり全開で、ジャック・ホワイトのサウンドも久しぶりに活気に満ちている。ビヨンセは火を噴くドラゴンに自分を例え(控えめな表現だ)、『レヴィー・ブレイクス』のジョン・ボーナムの轟くドラムもサンプリングしている。



しかし最も驚異的なのはやはり、彼女自身の声だろう。本作でビヨンセは、究極のブルース・ヴォイスを披露している。滑稽なほど不快に嘲るかと思えば、『He’s always got them fucking ex-cuuu-ses(あの人にはいつでも都合の良い言いわーけーがある)』と歌い、辛辣なバラード『ラヴ・ドラウト』では、プラスティック・オノ・バンドふうの金切り声を発する。しかし、最後はどうしてもハッピーエンドで終わりたかったようだ。カップルはキスをして仲直りし、その後いつまでも、または少なくとも翌朝までは幸せに過ごす。



ビヨンセは常にスーパーヒーローでいることを熱望してきた。『レモネード』は隅から隅まで沿ったその希望に内容だ。『6インチ』で歌っている罪作りな人物のように、彼女もあらゆる人間を死ぬほど魅了した。世界はそれを目撃したのだ。

怒りから救いまで詰め込んだパワフルなニューアルバム『レモネード』映像はこちら








レモネード


ビヨンセ


ソニー


発売中


★★★★★
http://www.sonymusic.co.jp/artist/Beyonce/discography/SICP-4838



Translation by Mariko Shimbori

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE