ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックスとの思い出と最新アルバムを語る

─あなたのギターからは、必ず生き生きとしたヴォーカルのようなクオリティを聴くことができます。ギターだけで表現できることは、限られているのでしょうか?



そんなことはない。特にストラトキャスターだったらね。アームのおかげで、いろんなトーンが出せる。元は、曲の最後のコード向きなんだろうけど(ゴムのようなコードのサウンドを出して笑う)。でもフェンダーは、何が起きるかなんて知る由もなかったんだ。バネ仕掛けのアームは、俺の一部になってる。ペダルスティール・ギターみたいに、限りなく音をベンドできるんだ。でも俺は、いつでも美しいメロディーを奏でるのが好きでね。そうじゃなかったら、耳障りなサウンド以外の何でもない。50年代の偉大なギタリストを聴いてみな。彼らは、不快なインダストリアルなディストーション・サウンドを出したりなんかしてない。スコッティ・ムーア、クリフ・ギャラップ、ジャンゴ・ラインハルトは、楽曲をソロで弾いてた。彼らのソロには、ひどい音がない。俺はそういうのを聴いて、そのルールに従ってるのさ。



─『BECK01』は、ギターとクラッシックカーとの二重生活を記録していますね。ボンネットの中をいじったり、車体の下に潜り込んだりする時に、手の怪我を心配しないのですか?



キッチンの方がよっぽど危険だね。にんじんを縦に切ってた時に、にんじんが左に転がってきてさ。包丁が指の方に横になってた。だから、にんじんは切ったらいけないことになってるんだ。グラインダーは問題なし。生まれつき上手でね。溶接棒の反対側を持って、手を焼け焦がしたことがある。今は使いこなせてるけど。16歳のころからやってるんだ。

─何がきっかけに始めたのですか?



叔父が昔、週末になるとMGのスポーツカーに乗せてくれてたんだ。あの頃一番興奮してたことでね。でも、冬場はそうでもなかった。なんたって、凍えてたから。叔父は、屋根を閉めることを嫌ってね。でも、6歳とか7歳って、鍛えられなきゃいけない年齢なわけで。叔父はエンジンを点検している時、「ほら、このバネを押してるんだよ。バネを押して、エンジンのこの部分を押すんだ」とか言ってた。だから初めて車を買って、エンジンがダメになった時、何をしたら良いかすぐに分かった。道具を揃え始めると、楽しくなってきたんだ。道具が増えると、ある種の権限を感じるんだ。節約にもなるし、快感だって得られる。切ったり溶接するスキルを身に付けたことで、さらにハマったわけ。

─車の修理だけなのですか?運転の方は、どのくらい楽しんでますか?



車がよく走るってことが分かるだけで、十分なんだ。作業が終わった時、ちょっと悲しいんだよね。運転しやすい車なら、運転するよ。でも楽しみは、車の修理段階なんだ。

─ニュー・アルバムの『O.I.L.(キャント・ゲット・イナフ・オブ・ザット・スティッキー)』では実際に、オイル缶でソロを弾いてますよね。そのことについて話してもらえますか?



オイル缶で作られたギターなんだ。1ガロンの昔ながらの金属缶。ライヴが終わって楽屋に戻ったら、置かれてたんだ。ソファ、飲み物専用キャビネット、スナックしか置いてない楽屋だったんだけど、床の中央にネックの付いたオイル缶があってね。「マジかよ。(ZZトップの)ビリー・ギボンズに間違いない」って言ったんだ。案の定、「楽しんでくれ。愛を込めて。BFG」と書いたメモがあった。「これは弾くことができるのか?」と思ってアンプにつないだら、見事なサウンドが出たんだ。

Translation by Miori Aien

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