ジョージ・マーティンの息子が語る父親の才能、ビートルズ『Love』の音楽制作

—『Love』お披露目の頃、ちょうどマッシュアップも最初のブームでした。

マッシュアップは面白いなと思った。僕は、「バンド自身が自らをマッシュアップしたら、どうなるんだろう」と思ったんだ。

—"ブラック・アルバム"というアイデアはご存じですか。ビートルズ・メンバーのソロ作品から、ファンが自分なりの"その後のビートルズ"アルバムを作ることを言います。

いや、知らないけどクールなアイデアだね。僕も何年か前に考えたことがあるよ。スコセッシの映画『ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』の仕事をしていてこう思ったんだ。『オール・シングス・マスト・パス』『イマジン』『メイビー・アイム・アメイズド』『想い出のフォトグラフ』をマッシュアップしたらすばらしいだろうな、ってね。僕もずっとやってみたいことだね。大人の事情で、僕がやるにはちょっと地雷があるんだけど。

マッシュアップで大事なのは、まさに創造力なんだ。4つの合計は、それぞれの個よりも優れていなければならない。ビートルズも自分自身にそう言い聞かせていたんじゃないかな。彼らは素晴らしいレコードを作った。父もそうだ。父がジェフ・ベックと作った作品は驚くほどだ。でも後知恵というのは使えるものでね、振り返って「見てみろ、この瞬間が世界を変えたんだ」なんて指摘することができる。そんなことができる人はまずいないからね。

—メンバーは何と言っていましたか。

『Love』を最初に制作した時を振り返ると、『カム・トゥゲザー』のことを思い出す。4人そろって演奏していた『アビイ・ロード』時代の曲だ。ポールとリンゴが別々にやってきた。曲は高音質で、内容満載で、全てを聴き取ることができた。じっと座って曲を聴くと、2人ともが同じことを言った。ポールの言葉を借りると、「この日のことは覚えているよ。いいバンドじゃないか」ということだった。彼のような人が聴きに来てくれて、昔を懐かしんでくれる。ああいう人は昔を振り返ったりしないものなんだよ。父にしてもそうだった。ただ、「当時の感覚を思い出すよ」と言っていた。こうしたことが僕の中にもっとも強く刻まれている。

—ポール・マッカートニーのアルバム『NEW』ではプロデューサーも務めましたね。

楽しい時間だった。おかしなことに、僕と父を比較しなかったのは彼が初めてだった。家族ぐるみでしっかり付き合いがあると、かえってそういうことをしないんだね。ポールはスタジオでもっとも刺激的でクリエイティヴな人の一人だ。何にでも挑戦しようとする。それが今でも彼の姿勢なんだよ。

Translation by Kuniaki Takahashi

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