「裸のトランプ像」を仕掛けた無政府主義者のアーティスト集団とは?

裸がいい。当然、それがベストだと思われた。彼らは、イルマ・ゴアが色鉛筆で描いた悪名高いトランプの絵でちょっとした騒動を引き起こすほどの注目を集め、トランプの支持者に襲撃されたことを知っていた。「今回の過程で、彼女のことがよく話題になりました。アートワーク全体はあんなに無邪気なのに、すごい結果を出したんですから」とスポークスパーソンは話す。「あちらは1枚の紙に数本の色鉛筆でしたが、こちらは5つの都市に5体の像というわけです」

最終的に、ラスベガスを拠点に活動するホラー・アーティストのジンジャーにたどり着いた彼らは、うなるオオカミのコスチュームや本物そっくりのシリコン・マスクといった彼の作品を見るや否や、成功を確信した。「我々は、"あなたはモンスターが好きですよね。トランプはモンスターです。さあ、こいつをやっつけましょう"と言いました」とスポークスパーソンは話す。1980年、帝王切開で生まれたジンジャーは、母親の胎内から手を突き出して看護師を失神させた話をするのが好きだ。4歳の時、おじに『ポルターガイスト』を見せられてからホラーのジャンルに取りつかれた彼の高校時代のヒーローは、フレディ・クルーガーやジェイソン・ボーヒーズのような残忍なキャラクターだった。「両親は、私が成長したらアーティストかシリアル・キラーになるだろうと思っていました」とジンジャーは話す。幸いなことに、彼は前者を選択し、イーライ・ロス監修でラスベガスにオープンし短命に終わった"ゴアトリアム"のような大規模なお化け屋敷で職を得た。これぞまさしくインディクラインが探し求めていた経歴だった。


突如姿を現した像に殺到するニューヨークのユニオン・スクエアの人々(Photograph by Jason Goodrich)

元はオレンジ・メナスに投票しようと考えていたジンジャーだが、トランプの過去について詳しく調べ、あの恐ろしい顔を何カ月も見つめた末に翻意 し、この挑戦を引き受ける決意をした。彼は、数年前にインディクラインが行ったある活動をよく覚えていた。ラスベガスの使用されていない広告掲示板に"死ぬほど仕事が欲しい(dying for work)"と殴り書きし、その下に首を吊った状態でスーツ姿のマネキンをぶら下げた抗議に、いたく感銘を受けたのだった。

Translation by Naoko Nozawa

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