映画『ジェイソン・ボーン』:CGでは描けない魂がこもったアクション

監督:ポール・グリーングラス | 出演:マット・デイモン、ジュリア・スタイルズ / 配給:東宝東和
By Peter Travers 2016/10月号 P116〜117 |
@Universal Pictures
マット・デイモン演じるジェイソン・ボーンの復帰作は、魂がこもったアクション。

全米が愛国に燃える7月4日の独立記念日に、本作の公開が間に合わなかったのは実にもったいない。夏休み向けの痛快で派手なアクション映画なのに、中身もしっかりある、期待を裏切らない作品だからだ。

『ボーン・アイデンティティー』(02)、『ボーン・スプレマシー』(04)、『ボーン・アルティメイタム』(07)を通じて、主人公のジェイソン・ボーンそのものに成りきったマット・デイモンがついに復帰。場外ホームラン級の演技を見せつけるデイモンも、シリーズ中の二作を監督したポール・グリーングラスも、今の世相に訴えかける脚本に出会うまで妥協はしたくなかったようだ。デイモンのセリフは、せいぜい25行ほど(なにしろボーンは動きが勝負)。だが脚本が、サイバー攻撃や社会の安全と個人のプライバシーとの線引きなど、現代社会の問題点について雄弁に語る。

一匹狼のボーンは失っていた記憶を取り戻したものの、罪悪感に蝕まれていく。ざっと見積もっても1000万ドルはかけてCIAが彼を殺人兵器に仕立てたのだから無理もない。緊縮策をめぐるギリシャでの暴動のさなか、そんなボーンの前にかつての仲間ニッキー(ジュリア・スタイルズ)が現れ、CIA長官のデューイ(陰りたっぷりのトミー・リー・ジョーンズ)が影の内閣の樹立を画策していることを知らせる。アテネ~ロンドン~ベガスを転々とするボーンを常に監視しているのは、デューイの部下、リー(アリシア・ヴィキャンデルが光っている)だ。
 
ドンパチ系スパイ・サスペンスを、手持ちカメラでピリピリとしたドキュメンタリー・タッチで描くグリーングラス。視覚効果もCGを排除して現実的だ。ベガスのカーチェイスなどにも度肝を抜かれる。その間、ボーンの頭の中で繰り広げられる葛藤に引き込まれていくのは、デイモンの演技力があるからこそ。パワー全開で手に汗握る本作には、CGでは描けない魂がある。


『ジェイソン・ボーン』
監督/ポール・グリーングラス
出演/マット・デイモン、ジュリア・スタイルズ
10月7日(金)より、TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー
http://bourne.jp/

Translation by Yuko Kubota

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