グリーン・デイが語る、復活までの長い道のり:新作『レボリューション・レディオ』制作秘話

大酒飲みで知られるアームストロングは2012年、それまで何とか守っていた一線を越えてしまう。発売日の変更を強いられ、間髪を入れずににリリースされる形となった3部作『ウノ!』『ドス!』『トレ!』(「あれはさすがに無茶しすぎた」と彼は語っている)の制作を強行する一方で、「朝目覚めた時に、自分がまだ生きていることが不思議に感じられた」と話すほど、アームストロングのアルコールと睡眠薬への依存は歯止めが効かなくなっていた。妻と2人の10代の子供と自宅で過ごしている時でさえも、死についてぼんやりと考えることがあったという。「夫として、そして父親として、あの頃の俺は完全に失格だった」

アルコールを断って4年目に入ったという現在、アームストロングは自身を縛り続けたジンクスを打ち破ろうとしている。グリーン・デイは10月7日、実に4年ぶりとなる新作『レボリューション・レディオ』をリリースする。28年におよぶ歴史において最長となるブランクを経験したが、アームストロングはもう以前のように、バンドを脆いヴィンテージカーに例えたりはしない。「俺は間違ってた。間違ってたんだよ。」新設されたオークランドにあるスタジオの2階にあるクラブハウスを思わせるラウンジで、上質の椅子に腰掛けた彼は半ば笑い飛ばすようにそう話す。「苦い経験を経て、俺は学んだんだ。情熱は無理に生み出そうとするものじゃないってね。成長しようとずっともがいてきたけど、俺は自分の限界に気づいていなかった。そしていつのまにか、自分が自分自身でなくなってしまってたんだよ。俺はグリーン・デイという存在に押しつぶされそうになってた。だからこそ、一度立ち止まる必要があったんだ」

何のギミックも持たない12曲入りの今作は、グリーン・デイが15年ぶりに原点回帰を試みたアルバムだ。「このアルバムは、俺とビリーとトレがただ音を出し合った結果なんだ」ダーントはそう話す。「『カープランク』(1992年発表のセカンドアルバム)を作ってた時の感覚を思い出したよ。何も考えずにただ音を鳴らすっていうね」U2にとって『オール・ザット・ユー・キャント・リーヴ・ビハインド』(2000年作)がそうであったように、今作はグリーン・デイがバンドのルーツに立ち返って生み出したアルバムだ。「今の俺たちが鳴らすべき音について、何度も自問した時期があった」アームストロングはそう話す。「答えはシンプルだった。ただグリーン・デイの音を鳴らせばいいと気づいたんだよ。だってグリーン・デイは最高なんだからさ!」

『ウノ!』リリース直後の2012年9月21日、泥酔状態でiHeartRadioフェステイバルのステージに立ったアームストロングがとった行動は、集まったオーディエンスを戸惑わせた。バンドの持ち時間を示す電光掲示板に残り1分と表示されたのを目にし、彼は怒りを爆発させた。「ふざけんじゃねぇ!」彼は感情を露わにして叫んだ。「俺たちは1988年から続けてるんだぞクソったれが。あと1分ってどういうことだよ?俺はジャスティン・ビーバーじゃねぇんだよこのオカマ野郎。ふざけんな!」アームストロングはギターを木っ端微塵に破壊してステージを去り、彼を孤立させるまいとダーントもそれに倣った。

アームストロングが泥酔状態にあったことは否定できないものの、そもそもポップスターが集うフェスティバルに出演したこと自体が間違いだったと彼らは話す。「パンクの道を歩むと一度決めたら、何があってもそれを曲げちゃいけないんだよ」アームストロングはそう話す。黒のジーンズ、黒のコンバース、黒のボタンダウンシャツに緩んだポルカドットのタイ、そしてお世辞にもマッチしているとは言い難いブラウンのカーディガンという服装の彼は、ロックンローラーであり父親でもある。ジェルで固められた真っ黒の髪と長年放置したままの欠けた前歯こそ子供っぽいものの、無精髭には白髪が混じっている。彼のどこか落ち着きのない様子は、生徒補導員に目をつけられた不良を思わせる。

Translation by Masaaki Yoshida

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