YOSHIKIとジーン・シモンズが語る、互いへの思いとドキュメンタリー『We Are X』

ーKISSはロックのコンサートにおいて、ド派手な演出というコンセプトを確立しました。

シモンズ:恵まれた環境にあるからには、何か変わったことをやらないと損だからな。子供の頃、ストーンズやザ・フーやオーティス・レディング等、好きなアーティストのライブをたくさん観たけど、なんでもっと派手にやらないんだろうっていつも思ってた。だから1973年に、俺たちは史上最高にゴージャスなショーをやることに決めたんだ。あり余るほど金を持ってて何だってできるなら、他人が絶対やらないようなことをやりたくなるもんさ。怪獣映画が大好きな俺は、ゴジラの顔をあしらったブーツを作らせたんだ。

大事なのはファンを楽しませることさ。批評家の意見なんかじゃなくてね。ファンを喜ばせることを何よりも重視するYOSHIKIの考え方には強く共感している。それが俺たちの共通点なんだ。

ー『We Are X』は、X JAPANの音楽の多くがYOSHIKIが経験した悲痛な出来事に基づいたリアルなものであるという点を強調しています。対照的に、KISSは非現実的な存在です。

シモンズ:俺たちの曲はパーソナルだよ。「I」で始まる歌詞が多いのがその証拠だ。「俺は一晩中ロックンロールし続けたいんだ」とか「俺は自分を信じる」とかね。俺たちの音楽は外に向けた感情の爆発、言ってみれば独立記念日の花火のようなもんだ。それに対して、YOSHIKIの音楽はもっと内省的なんだ。

YOSHIKI:いろんなものに刺激を受けるけど、一番のインスピレーションは自分が感じる痛みなんだ。僕がKISSの音楽と出会ったのは、父が他界した直後だった。言葉にならない怒りと悲しみに支配されていた僕を、ロックが救ってくれたんだ。通りでドラムを破壊したり大声で叫べば逮捕されるけど、ステージ上では思う存分に感情を爆発させることができる。怒りをぶちまけることも、憚らず涙を流すこともできる。ステージは僕が最も自由になれる場所なんだ。


「コンサートに足を運んでくれるファンには、一生ものの体験をして欲しいんだ」ーYOSHIKI(Photo byTanya Braganti)

ー『We Are X』で語られるストーリーに、KISSとして共感できる部分はありましたか?

シモンズ:もちろんさ。彼は俺よりもずっと勇敢だと思う。情熱と心の叫び、そして抱える痛みを晒け出すことを彼は恐れない。他人がどう思うかなんて気にしないんだ。本物の痛みがどういうものかは、俺だってよく知ってる。俺の母親はナチスの収容所に入れられ、家族の多くが殺された。父が一人っ子だった俺と母親を残して家を出た後、俺たちはなんのあてもなくこの国にやって来た。英語なんか一言も話せなかったにもかかわらずね。

俺にとってKISSは自分の身を守る鎧であり、家族のような存在だ。KISSの母体となったバンドを俺は心のよりどころにしていたけど、長くは続かなかった。この世に確かなものなんて何もなくて、最後に頼れるのは自分自身だけなんだよ。だからこそ、俺はYOSHIKIの勇敢さに感銘を受けているんだ。彼にとってステージは、ゲシュタルト療法やアーサー・ヤノフのプライマルセラピーようなものなんだよ。痛みは徹底的に向き合うことで克服できるということを、彼は誰よりもよく理解している。

Translation by Masaaki Yoshida

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