デザート・トリップ:疑う者をも黙らせた本物のクラシック・ロックのメガフェス

デザート・トリップ自体は実現不可能かとも言われた事業だったが、伝説のアーティストが集結した他にはない素晴らしいイベントになった。集まった6組のアーティストの内、ザ・フーだけが1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルと1969年のウッドストックに出演している(ニール・ヤングはクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの一員としてウッドストックに参加したが、映画への出演は拒否した)。ロジャー・ウォーターズは予告編用のインタヴューの中で、コーチェラ・フェスティバルのプロモーターGoldenvoiceの社長ポール・トレットが最初に出演を打診してきた2015年11月のことを振り返っている。「"週末のイベントにニール・ヤング、ボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、ポール・マッカートニー、ザ・フーがもし集まったら一緒にやるかい?"って言って、とにかく契約書でなくとも出演を確約した書面を欲しがったんだ。俺はその全員が「イエス」と言うだろうな、と思ったよ。だけど正式契約となると難しいだろう、とも感じた」。出演した6組の1日のギャラは1人あたり平均700万ドルで、デザート・トリップの総製作費1億ドルの約半分を占めたと見られている。


(Andy Keilen for Rolling Stone)

出演者の平均年齢が72歳で、会場に用意された水洗トイレは1,000基以上という話は決して大げさな話ではなく、しかもデザート・トリップの会場は誰もが楽しめるイベントだった。アリーナとグランドスタンドに設けられた最上級の指定席にはクッションとカップホルダーが付き、ステージに最も近い場所に若者向きのスタンディング席が設けられた。高級飲食施設のDesert Trip Culinary Experienceにはエアコン付きのラウンジがあり、凝ったデザートを提供した。しかし、1日199ドルの自由席のチケットでもバーガーやクラフトビール、ベジタリアン料理からシーバスリーガルまで、さまざまな料理やドリンクを楽しめた上、広いロックの写真展にもアクセスできた。カリフォルニア州ポモナの独立系の音楽ショップGlass Houseが運営する期間限定のレコードショップでは、中古LPが3ドル程度、シングル盤が1ドルで販売された。

"デザート・トリップ2"に出演するアーティストの噂が既に広まっている。主催者のGoldenvoiceは2017年のイベントについてまだ何も公式に発表していないが、エルトン・ジョン、ブルース・スプリングスティーン、スティーヴィー・ワンダー、フリートウッド・マックなどの名前がまことしやかに流れている。一方、今年のトリップ参加者たちは2週に渡るイベント終了後、それぞれいつもの生活へと戻っていった。ディランは11月末まで続くツアーに出て、ザ・フーは来春まで予定が埋まっている。ストーンズはまもなく新しいブルース・アルバムを、ヤングは12月にアコースティック・アルバムをリリースする。そしてマッカートニーは新たな音楽に取り組み、ウォーターズは1992年以来となるソロ・スタジオ・アルバムをレディオヘッドのプロデューサー、ナイジェル・ゴドリッチと共に制作に取りかかっている。

ウォーターズは、「デザート・トリップでは、ギターを持った誰かが常に心を打つ曲を奏でていた。チケットが売り出された頃には、誰もこんな素晴らしいイベントになるなんて予想していなかっただろう。何せ実現できるかどうかも信じられないようなイベントだったからね。ここに参加できて本当によかったよ」と、最後に語っている。

Translation by Smokva Tokyo

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