ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、1990年の再結成時に演奏した『ヘロイン』を聴く

1968年のジョン・ケイル解雇以降初めてオリジナル・メンバーでステージに上がり、『ヘロイン』を演奏したルー・リード

1990年、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはフランスで行われたアンディ・ウォーホルの追悼イベントで、1968年のジョン・ケイル解雇以降初めてオリジナル・メンバーでステージに上がり、『ヘロイン』を演奏した。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが1993年に再結成ツアーをスタートさせるまで、それは長い長い道のりだった。1987年ルー・リードとジョン・ケイルは、ニューヨーク市のセント・パトリック大聖堂で行われたアンディ・ウォーホルの葬儀で顔を合わせた。それまで何年も音信不通だった二人だが、恩人の死は、そんな昔のいがみ合いなどとは比べものにならないほど大きな悲しみだった。この日をきっかけに二人はまた連絡を取り合うようになり、間もなくウォーホルのトリビュート・アルバム『ソングス・フォー・ドレラ(原題:Songs for Drella)』の制作に取りかかった。二人の共同作業は1968年のアルバム『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート(原題:White Light/White Heat)』以来だった。

二人はアルバムのプロモーションのため、短いツアーに出た。1989年12月にブルックリンで行われたライヴのアンコールには、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのドラマー、モーリン・タッカーが登場し、『ペイル・ブルー・アイズ(原題:Pale Blue Eyes)』を演奏した。これをきっかけにヴェルヴェット・アンダーグラウンド再結成の噂が盛り上がったが、リードは一貫して噂を否定し続けた。しかし数ヵ月後、オリジナル・メンバーの4人が、フランスの小さな街ジョイ・アン・ジョザで行われたアンディ・ウォーホル回顧展のオープニング・セレモニーに招かれた。ケイルとリードは、元々そのイベントで『ソングス・フォー・ドレラ』からの数曲を披露する予定だった。しかしタッカーとギタリストのスターリング・モリソンも参加したことで、このイベントはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの再結成だとみなされている。

「4人が今後また同じステージに立つことは決してないだろう。ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは過去のものだ」とリードはイベント時の記者会見で宣言した。この一時的な和解の時期に一人仲間はずれだったスターリング・モリソンは悔しがった。「俺はどうすればいい? バックステージで他のメンバーがプレーするのをただ眺めているなんて、どうにかなってしまいそうだよ。俺がそこでギターを弾かないなんて、みんなどう思うんだろ?」

『ソングス・フォー・ドレラ』のステージが始まる数時間前、リードはケイル、タッカー、モリソンと4人で食事をすることを了解した。4人がこうして顔を合わせるのは、1968年にケイルが解雇されて以来だった。その時の感情がついにリードを動かした。ステージの開始まで10分と迫った時リードは、タッカーとモリソンもステージに上げて『ペイル・ブルー・アイズ』を共演することを提案した。ただこの曲はケイル脱退後にレコーディングされたものだったため、リードは『ヘロイン(原題:Heroin)』を選んだ。

真っ昼間のステージでリハーサルもなく、スターリングはギターすら用意していなかった。しかし彼はすぐさまギターを借り、4人は呆然とする観衆の前で10分間演奏した。「最初人々は、とても素晴らしいセックスをした直後のように呆然としていた」と、ルー・リードの伝記『Transformer』の中でヴィクター・ボクリスは書いている。「そして突然我に返り、今度は4人の演奏にうっとりと聴き惚れた」。ラッキーなことに、会場に居合わせた誰かがこの貴重な瞬間を撮影してくれていたため、今私たちはその時の様子を見ることができる。

Translation by Smokva Tokyo

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