ドナルド・トランプが大統領になれた理由

オバマケアの失敗による保険料値上がりや二大政党以外に流れた票など、いくつかの要因がドナルド・トランプに有利に働いた。(Photo by Mark Wilson/Getty Images)

ヒラリー・クリントンにも十分勝ち目のある大統領選だった。

2016年の大統領選においてドナルド・トランプは、ラスト・ベルトと呼ばれる地域に属する3州で10万8000票を加算し、勝利へ向かって大きく前進した。

本稿執筆現在、集計作業が継続中のため詳細な数値は変わる可能性もあるが、おおまかには以下のような結果だった。

ペンシルベニア州でクリントンはトランプを約6万8000票下回った。

ウィスコンシン州では2万8000票差でトランプの勝利。

ミシガン州はまだ公式には発表されていないが、約1万2000票差でトランプが勝利したとみられる。

2016年11月9日(現地時間)の大統領選は、クリントンにも十分に勝ち目があった。

クリントンは総得票数ではトランプを上回ったものの、選挙人の獲得数で敗れた。全米約1億2000万票の内クリントンは、トランプを約20万票上回る票数を獲得している(執筆現在)。

勝利を分けるキーとなった上記3州における票の格差は小さく接戦だったため、はっきりとした原因を挙げることは難しいが、以下の5つの要因が影響したのは間違いないだろう。

1) 民主党と共和党以外の第三党や無所属候補に流れた票がトランプを助けた。上記3州におけるトランプとクリントンの得票差は、リバタリアン党のゲーリー・ジョンソンの3州での獲得票数の合計とほぼ一致する。アメリカ緑の党の候補者ジル・スタインが、ウィスコンシン州(3万1000票)とミシガン州(5万1000票)で獲得した票により、クリントンはトランプに追いつくことができなかった。

2) 勢いに任せたノースカロライナ州での選挙キャンペーンやアリゾナ州の奪還作戦など、クリントン陣営の選挙人獲得のための勢力図拡大作戦は、どこか思い上がったものがあったのかもしれない。ブルームバーグによると、クリントン陣営はテレビ広告に2億ドルを超える巨額な費用をかけたにもかかわらず、ウィスコンシン州やミシガン州ではほとんど流されなかった。ウィスコンシン州で初めてクリントン陣営がテレビ広告枠の獲得に乗り出したのが10月28日で、11月1日になってミシガン州で初めてテレビ広告が流された。早めに広告を打てば勝てた、という訳でもなさそうではある。ペンシルベニア州ではトランプ以上に広告費をつぎ込んだにもかかわらず、破れている。

3) 10月末に発表されたオバマケアの保険料値上げも、大統領選に大きな影響を及ぼした。ペンシルベニア州では、民間保険の加入率が55%跳ね上がった。ウィスコンシン州では個人保険の金額が16%上昇、ミシガン州はやや少なめの7%だった。

4) クリントンのメール問題の再捜査の可能性を示唆したジェームズ・コミーFBI長官による爆弾発表は、間違いなくクリントン票の足を引っ張った。

5) それからオバマ連合の亀裂。白人の労働者層からの圧倒的な支持を集めたトランプだが、同時にラテン系から8ポイント、アフリカ系から7ポイント、若者層から5ポイントの票を奪取することに成功した。

今後さらに各方面で、今回の大統領選の分析が進められるだろう。

今とは違った結果、また別のアメリカの姿は、我々のすぐ手の届く所にあったのだ。ここは涙をこらえて前を向こう。



Translation by Smokva Tokyo

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE