フェミニストや女性作家たちのロール・モデルとなった真摯な思索者ソンタグとは?

By Natsuo Kitazawa 2016/08月号 P54〜55 |
Louis Liotta / (c) NYP Holdings, Inc. via Getty Images
批評家、小説家、劇作家、映画作家、人権活動家。60年代初頭からラディカルな意志のスタイルを貫いた稀代の思索者、ソンタグとは?

アメリカのリベラルな新しい知性を代表する批評家、小説家、劇作家、映画作家、人権活動家として常に時代の最前線に立ち、「この一冊が60年代の感覚とスタイルのすべてを凝縮している」と評されたエッセイ集『反解釈』で衝撃的なデビューを飾って以来、2004年に71歳で命が尽きるまで乳癌や骨髄性白血病と闘い抜き、ハノイやサラエヴォに赴いて戦争と向き合い、毀誉褒貶に曝されることを恐れず(亡くなる3年前に起きた9・11ニューヨーク同時多発テロに際し、米大統領ジョージ・ブッシュが煽った愛国的な世論に断固として異を唱えた結果、アメリカ中から罵声を浴びた)、また自身のセクシャリティを隠さず(ローリング・ストーン誌出身の高名な写真家アニー・リーボヴィッツはソンタグの同性愛のパートナーとして公然の仲だった)、自著のタイトルに掲げた「ラディカルな意志のスタイル」を貫いて、後に続くフェミニストや女性作家たちのロール・モデルとなった真摯な思索者――それがスーザン・ソンタグである。

67年の創刊以来、編集長のヤン・S・ウェナー曰く、「ロックだけでなく、音楽を形づくったり、逆に音楽によって影響を受けたりした周囲の文化や政治にも注目し続け」、「探検者であり、初めて自分の口で語る人々」をインタヴューの対象としたローリング・ストーン誌が、ソンタグに対話を申し込むのは必然だろう。

本誌US版にインタヴューの短縮版が初めて掲載されたのは1979年10月4日号。同じ79年の初来日時に通訳を務めて以来の友人である木幡和枝氏が邦訳を手がけた『スーザン・ソンタグの「ローリング・ストーン」インタヴュー』の完全版(原著は2013年刊)が、今年河出書房新社から刊行されたことはまさしく快挙といえる。訊き手のジョナサン・コットは、US版の初代ヨーロッパ担当編集者で、ソンタグとはコロンビア大学の教師と学生として出会って以来、ときおり旧交を温めてきたが、以前からローリング・ストーン誌のためにインタヴューの機会を窺っていたという。

78年の2月と11月、二度に渡って、パリとニューヨークにあるソンタグのアパートをコットが訪れ、長時間の対話が実現した。そのすべてを収録した本書では、前年に出版されて話題騒然となった代表作『写真論』、癌患者としての自らの経験が触媒となって書かれた『隠喩としての病い』、彼女自身が「一人称の冒険」と形容する短篇小説集『わたしエトセトラ』という3冊の新刊・近刊についての質問を皮切りに、政治、社会情勢、思想、文化、性、恋愛、病、創作態度など、限りなく幅広いテーマでスリリングな討論が交わされる。インタヴュアーとしてのコットはジョン・レノン、グレン・グールド、レナード・バーンスタインといった、ロックから現代音楽に至る名だたる強豪たちを相手に、周到な準備に基づくディープな問いを発して触発することにかけては当代随一、かの文豪ヘンリー・ミラーに「あのインタヴューは、私の生涯で最高の出来だった」と言わしめたほどの名手である。ソンタグに対しても、たとえばこんなカードを切ってテーブルに並べる。

――あなたが書く文体に決定的な要素となっていると思われる四つの形容詞をリストにしてきました。「削ぎ落とされた(lean)」、「測られた(measured)」、「冷静な(unruffled)」、「無装飾の(unadorned)」。
Edit by Shun Sato

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