オバマ大統領、最高裁判事の空席を埋める手立てはまだ残されているか

トランプの大統領選勝利直後から、あとの祭りを悔いる声があちらこちらであがっている (Photo by Mark Wilson/Getty Images)

オバマ大統領は246日前、最高裁判事にメリック・ガーランドを指名した。

ドナルド・トランプの勝利が決まった直後から、彼を選んでしまったことを後悔する声が次々と聞こえてきている。そのひとつが、2016年2月に死去したアントニン・スカリア最高裁判事の後任として、オバマ大統領が指名したメリック・ガーランド判事の案件である。

ガーランドは、最高裁判事として承認されるために必要な手続きである公聴会の開催を246日間待たされている。この待機期間の長さは前代未聞である。過去には、1916年にルイス・ブランダイスが125日間待たされた例があるが、それでも今回の半分の期間である。

共和党の上院議員によるガーランド判事就任阻止は前代未聞の事態であり、そのような状況にありながら、なぜオバマ大統領が主導して判事の空席を埋めないのかが疑問視されている。

2016年春にワシントン・ポスト紙が論説で指摘した通り、共和党の上院議員らは、大統領による判事指名に対する勧告、承認、否決の憲法上の権利を事実上放棄している状態にある。

ローリングストーン誌は、市民団体Alliance for Justiceの理事長で、長年保守的な司法の改革を訴えてきたナン・アロンにインタヴューした。彼女は過去に、ロバート・ボークやサミュエル・アリートの最高裁判事就任に強く反対し、注目を集めている。「最高裁判事の件でオバマ大統領にまだ打つ手はあるか?」との問いに対する彼女の答えはひと言「No」、だった。しかし「この状況を野放しにしてはいけない」、とも述べている。

最近のオバマ大統領に対する嘆願に関してアロンは、「今の状況でオバマ大統領がガーランドを最高裁判事に据える法的手段は見出せない。判例もなく、難しいだろう」という見解を持っている。ガーランドがスカリアの後任として最高裁判事となれる可能性はないのだろうか? それよりもアロンは、ガーランドの指名に対し、両党からほとんど支持を得られていないことの方が問題だ、と指摘する。

オバマ大統領が休会任命の制度を使い、議会の会期の合間だけ一時的にガーランドを判事の椅子に座らせる可能性も残されている。「休会任命の難しい点は、ガーランドはわずかな期間しか最高裁判事でいられないことにある。彼が1年間判事でいたとしても、そのような短期間では国民、裁判所、司法に対して何の役にも立てないだろう」。

2016年の上院議会の閉会と2017年の会期開始の合間にあたる2017年1月初旬、オバマ大統領には任命のチャンスがある。しかしオバマ大統領にその選択肢はなさそうである。過去の大統領ほどオバマ大統領は休会任命に積極的でない。ジョージ・W・ブッシュは171回、ビル・クリントンは139回の任命を行っているのに対し、オバマ大統領はわずか32回しか行っていない。

「人々がこの怒りを忘れず、次に最高裁判事に指名される人物が私たちの権利と自由を尊重しないような人間であった場合に、徹底的に闘ってくれることを願う」とアロンは言う。それが、ガーランドの一件に対する多くのフラストレーションの中で見出だせるわずかな希望の光だという。「常に監視し、怒りを抱え、適任でない判事が指名された時には一致団結して反対の声を上げて欲しい」とアロンは望んでいる。

Translation by Smokva Tokyo

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