LGBTQコミュニティを育み、パラダイス・ガラージのモデルとなり、ニューヨークのクラブカルチャーの発展に貢献した伝説のパーティー、The Loftを主催したDJのデヴィッド・マンキューソが72歳で死去。
ニューヨークのクラブカルチャー史に名を残す伝説のパーティ、The Loftを主催したDJのデヴィッド・マンキューソがこの世を去った。キッド・レコーディングスのオーナー、クレイグ・シフティがフェイスブックを通じて明らかにした。享年72歳、死因は公表されていない。
「言葉にならない悲しみを覚えている」シフティはそう綴っている。「彼が旅立ったことを心から寂しく思う。しかし彼が残したものは、世代を超えて音楽とクラブを愛するすべての人々をインスパイアし続けるだろう。かけがえのない宝物を残してくれた彼に、心から感謝の気持ちを捧げる」
マンキューソは1970年に、ニューヨークでThe Loftを初開催した。彼の自宅でひっそりと開催されたこのプライベートパーティは、人種と性別の多様性を重んじ、当時ナイトクラブで肩身の狭いを思いをしていたLGBTQの人々に愛された。ドリンクやフードの販売を行わなかったため、The Loftはニューヨークの厳しい風営法によって取り締まられる事態を回避した。またマンキューソがニューヨーク市を相手に行われたクラブ経営をめぐる長期にわたる裁判で勝訴したことは、パラダイス・ガラージ、ザ・ギャラリー、ザ・セイントといった伝説的クラブの誕生に大きく貢献した。
「ディスコ、そしてその影響下にあるすべての音楽に守護天使がいるとしたら、ぼろきれを身にまとったデヴィッド・マンキューソはその化身だった」ダンスミュージック史のバイブル『そして、みんなクレイジーになっていく − DJは世界のエンターテイメントを支配する神になった』において、著者のビル・ブルースターとフランク・ブロートンはそう綴っている。「すべては彼のパーティー、The Loftから始まった」
マーク・ロンソンは「ニューヨークのナイトライフのゴッドファーザー、デヴィッド・マンキューソよ永遠に」とツイートし、ニンジャ・チューンは以下のコメントを発表した。「ニューヨークでディスコを生み出したデヴィッド・マンキューソは、1970年からダンスフロアにおける平等主義を実践してきた。どうか安らかに眠って欲しい」
「今はどこかのクラブに遊びに行っても、サウンドシステムやドアポリシーにがっかりさせられることが多い」今年行われたレッドブルのインタビューで、マンキューソはそう語っている。「私はそういう部分に徹底的にこだわり、自分の信念を貫くことで社会における価値観を広げてきた。今日に至るまで、ドレスコードや年齢制限を設けたことは一度もなく、アルコール類の販売もしない。貧富の差を超えて人々がひとつになれる空間は、社会における価値観を押し広げていく。あらゆる人々が交錯し、どんな偏見からも解放される。そういう空間では、当然のように音楽も自由にクロスオーバーする。あらゆるタイプの音楽をプレイするDJたちを前に、オーディエンスはこんな風に語った。「俺はレッド・ツェッペリンもジェームス・ブラウンも、どっちも同じくらい好きなんだ」
主催したラヴ・セイヴス・ザ・デイでのプレイにおいて、マンキューソは曲同士のミックスやピッチの変更といったDJの常套手段を意図的に避け、驚異的な音質を誇るサウンドシステムで常に曲をフルに流した。ロック、ポップ、ファンク、ソウル、ラテン、ジャズなど、ジャンル分けされていない多様なレコードコレクションの中からプレイされる曲に合わせて、フロアのオーディエンスは一晩中踊り続けた。The Loftはスティーヴ・ミラー・バンドの『マッチョ・シティ』、マヌー・ディバンゴの『ソウル・マコッサ』、そして後にBボーイたちのアンセムとなるベーブ・ルースの『ザ・メキシカン』等、世界中のクラブで現在も愛される数々のクラシックを生み出した。
またマンキューソは、レーベルやアーティストがDJたちにプロモ盤を配給するレコードプールシステムの確立にも携わった。
1999年から2000年にかけて、マンキューソは70年代のシーンを代表する楽曲の数々をコンパイルした2部作『The Loft』を発表。インターネット上では、同作に収録されなかった膨大な量のクラシックを集めたプレイリストも公開されている。マンキューソ自身がブースに立つことをやめてからも、The Loftは世界各国で年に数回開催されていた。
ニューヨーク発のダンスミュージックバンド、ハーキュリーズ＆ラヴ・アフェアーはThe Loftを愛した人々の思いをこう表現した。「デヴィッド・マンキューソが生んだThe Loftは、人々をひとつにする音楽の力の象徴であり、人類の最も美しい部分を照らし出した」
