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ローリングストーン誌が選ぶ、2016年ベストアルバム50枚

Christopher R. Weingarten, Jon Dolan, Jon Freeman, Brittany Spanos, Joseph Hudak, Mosi Reeves, Kory | 2016/12/11 16:00

| 2016年の顔となったアーティストたち 左からチャンス・ザ・ラッパー、デヴィッド・ボウイ、ビヨンセ(Photo by Jimmy King) |


10位 ヤング・サグ『ジェフリー』 
(原題:Young Thug, ‘Jeffery’)


ヤング・サグを「焦点の定まらないラッパー」と揶揄する人々は、彼の音楽を十分に理解できていないと言わざるを得ない。全身をタトゥーで覆ったアトランタの鬼才は、ハイになる快感からセックスの喜び、そして犯罪も厭わない金への執着まで、独自のボキャブラリーで自身を饒舌に表現してみせる。「エクスタシーでハイになる / クラウド・ナイン、俺をどこまでも連れていく」という『フロイド・メイウェザー』に登場する一節はその好例だろう。トラップ調の『フューチャー・スワッグ』から、ヘヴィなベースが響き渡る『ハランベ』まで、唯一無二の声と鋭敏なリズム感であらゆるビートを乗りこなすそのスタイルはまさに変幻自在だ。これまでと同じく、2016年も露出過剰気味だったことは否めないが、時に敵対しつつも敬意を払うリル・ウェインの後継者がいるとすれば、彼を置いて他にいないことは確かだ。クエボとトラヴィス・スコットを迎えたヒット曲『ピック・アップ・ザ・フォン』を収録し、紫の優美なドレスに身を包んだジャケット写真も美しい『ジェフリー』は、間違いなく彼のこれまでのキャリアにおけるハイライトであり、ヘテロセクシャル以外の価値観を受け入れようとしないメインストリームのヒップホップ界に強烈な一石を投じてみせた。M.R.

9位 レナード・コーエン 『ユー・ウォント・イット・ダーカー』
(原題:Leonard Cohen, ’You Want It Darker’)


11月に惜しくもこの世を去ったレナード・コーエンは、最後の数ヶ月間をロサンゼルス郊外にある愛娘の自宅の3階で過ごし、急激に悪化しつつあった病と向き合いながら、遺作となった今作『ユー・ウォント・イット・ダーカー』の制作に取り組んでいた。自由に体を動かすことができず、レコーディングスタジオの利用が困難だったため、彼の息子のアダムはダイニングルームのテーブル上にマイクを設置し、ラップトップで彼のヴォーカルを録音したという。本作で描かれているのは、最後の瞬間が近いことを悟った彼の荒涼とした心象風景だ。「予断を許さない状況でありながら、父は自分を奮い立たせるために音楽を作り続けた」アダムはそう話す。「ほとんど体を動かすことのない日々の中で、このアルバムを完成させることは父の生きがいとなっていた」タイトル曲でコーエンは、創造主である神への思いをストレートに表現してみせている。「差し出されることのない救いを求め灯された100万本のロウソク」彼はこう歌う。「あなたは最後の1本が消えるのを待っている / 神よ、あなたにこの身を委ねよう」キャリアを通して変化し続けた彼の最後の曲たちは、残酷なまでに美しく響き渡る。A.G.

8位 カニエ・ウエスト『ザ・ライフ・オブ・パブロ』
(原題:Kanye West, ’The Life of Pablo’)


リリース後も修正が加え続けられた今作は、カニエのキャリアにおいて最も焦点がぼやけた作品と言える。ピカソのゲルニカのように多様で、その手腕が存分に発揮された秀逸なトラックとお決まりの滑稽な瞬間が混在する『ザ・ライフ・オブ・パブロ』には、セレブであることに対するパラノイア、父親としての未熟さ、頑ななまでの女性蔑視癖、抗鬱剤による副作用といった、「38歳と8ヶ月」を迎えた彼の現在がリアルに描かれている。オールスターが集結したゴスペル『ウルトラライト・ビーム』、ドレイクが参加したメランコリックなR&B『30アワーズ』、ケンドリック・ラマーを迎えたブルージーなミッドライフ・クライシス讃歌『ノー・モア・パーティーズ・イン・L.A.』等、ウエストの才能が引き寄せたアーティストたちとのコラボレーションは、本作における紛れもないハイライトだ。R.S.

7位 ザ・ローリング・ストーンズ『ブルー&ロンサム』
(原題:Rolling Stones, ’Blue & Lonesome’)


スタジオ・アルバムとしては11年振りとなる本作で、ザ・ローリング・ストーンズはバンドのルーツであるブルースに回帰した。1965年に『リトル・レッド・ルースター』のカバーでUKチャートを制した若きバンドが誇ったエネルギーは、51年の時を経ていぶし銀の魅力を放つ貫禄へと変化した。ハイライトとなるのはスローなナンバーの数々だ。ギターが交錯するジミー・リードのカヴァー『リトル・レイン』では、ミック・ジャガーのハーモニカが高らかに鳴り響き、チャーリー・ワッツのジャズを思わせる繊細なドラムが華を添える。『オール・オブ・ユア・ラヴ』では、キース・リチャーズがレイドバックした様子でギターとたわむれ、ロン・ウッドのアグレッシブなチョーキング・プレイは60年代初頭のバディ・ガイを思わせる。カヴァー曲のみで構成された本作は、マジック・サムやメンフィス・スリムがひっそりと産み出したシカゴ・ブルースを現代に蘇らせてみせた。ルーツに回帰することで、ストーンズは自らをアップデートしてみせた。P.D.

6位 レディオヘッド『ア・ムーン・シェイプド・プール』 
(原題:Radiohead, ’A Moon Shaped Pool’)


「低空飛行のパニック・アタックがやってくる」5年の沈黙を破り発表されたレディオヘッドのゴージャスな新作、『ア・ムーン・シェイプド・プール』の冒頭曲でトム・ヨークが発した警告は、図らずも現実のものとなった。『デックス・ダーク』のようなバラードでは、『キッド・A』と『アムニージアック』の悪夢から目覚め、もはや認識不可能となった現実の世界を目の当たりにしたかのようなヨークの諦念が、異質なストリングスとダブ調のベースとともに奏でられる。艶やかなピアノとヴァイオリン、『レッド・ツェッペリン Ⅲ』を彷彿とさせる妖艶なアコースティックギターらが彩る今作は、満を持してスタジオ音源化された『トゥルー・ラヴ・ウェイツ』が収録されていることも手伝って、レディオヘッド史上最も優美なアルバムとする声も多い。しかし本作がもたらすのは、決して癒しではない。ヨークが警告するように「真実は君を困惑させる」ものだからだ。R.S.
Translation by Masaaki Yoshida

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