安齋 肇が語る"変態"論:最初で最後の映画制作秘話

By Mio Shinozaki 2017/01月号 P68〜71 |
ローリングストーン日本版2017年WINTER号/連載 煙たい男たち/安齋 肇 Photographs by Maciej Kucia(AVGVST)
特集 煙たい男たち|安齋 肇

"これが遺作です"と遺作宣言をしています


煙たい、というよりも、まさに煙のような男である。ふわふわと、ゆらゆらと、いろんなジャンルを股にかけて漂う。数多のアートディレクションを手掛け、イラストを描き、『タモリ倶楽部』では"ソラミミスト"を名乗り、音楽活動も行う。そして還暦を超えて、安齋 肇が初めて手をつけたのが映画監督である。

「もともとは、みうら(じゅん)くんが日活ロマンポルノの解説をする番組をやっていて、番組のスタッフさんから"そんなにポルノが好きなら、撮ってみれば?"と言われたことがきっかけなんです。その時点で、みうらくんの頭の中では"主演は前野健太、監督は安齋 肇"とイメージしていたらしいんですね。だから僕のところにみうらくんから話が来た時には"スポンサーも取ったし、主演もいるし、俺が原作だから撮ってね"って(笑)。前野健太というミュージシャンにもすごく興味があったので"やったぁ、これは面白くなるな"と原作も読まずに承諾しました。初監督なので、承諾とかそんなえらそうな感じじゃないんですけどね(笑)。やらせてもらえるんだと、むちゃくちゃうれしかったです」

映画監督という仕事に、以前から興味があったのだろうか。

「僕みたいに棺桶に片足突っ込んでいるような人間にとって、映画はすごく特別な存在なんですよ。小説を書くとか、すごくいいアルバムを残すとか、もちろんそういうこともすごいけど、僕の中では映画1本を残すほうがリスペクトできると言ったら変ですが……、そういう感覚があるんです。まさか自分が映画を撮れるなんて思ってもいなかったので、"これが遺作です"と遺作宣言をしています(笑)。これで死ぬという意味じゃなく、"僕が残すのはこれが最後の作品"くらいの気持ちでやりましたということ。実際、撮っている時も映画のほうから"おまえ、頑張れ"と言われていた感じなんですよね。とりあえず、今やれることは全部やっちゃったので、もういいかなって」


(C)松竹ブロードキャスティング

作品名は『変態だ』。妻の実家に食わせてもらっている売れないミュージシャンは、実はSM愛好家という裏の顔を持っていた。女王様を同行させて雪山で行われるライヴ会場へ向かったところ、客席には妻がいる。そこで男が取った行動とは……? 完成作品を観たが、なんとも不思議な感覚になった。まるで、誰かの人生をのぞき見しているかのような。

「それは多分、カメラマンの三浦憲治さんがスチールカメラマンだということが大きいんでしょうね。"カメラマンは三浦憲治、音楽監督は古田たかしで"というのは、僕から出した唯一の条件なんです。ロックカメラマンの草分けでもある三浦さんは、みうらくんとの共通項的存在でもあったので、ぜひにとお願いしました。ただ三浦さんって、本当にスチールが好きで、あまりムービーを撮ったりしないんです。だからなのか、スチールを映像にしたみたいと言ったらいいのかな、回していると必ず決めの画まで行くんですよ。それが終わると、また次の決めの画を探す。本能的にやっているんだと思うんですが、それがきっとのぞき見みたいな感覚になるのかもしれないですね」

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