河本準一が考える"芸人"とは:タンメン誕生秘話を語る

By Mio Shinozaki 2017/月号 P72〜75 |
ローリングストーン日本版2017年WINTER号/連載 煙たい男たち/河本準一 Photographs by Maciej Kucia(AVGVST)
連載 煙たい男たち|河本準一

器用貧乏だと、いつまで経っても仕切れるところに行けない。"都合のいい男"なんですよ。

河本準一という人間を語るうえでは、"器用"という表現が外せない。組んでいるコンビ・次長課長のネタには定評があり、ものまねもできる。歌が上手く、タンバリン芸も鮮やか。バラエティ番組で出演者が座る"ひな壇"では、縦横無尽の立ち回りを見せる。

「僕の場合、"器用"に"貧乏"がつきますね。幼い頃から、何でもできないと気がすまない。100%じゃなくても、ある程度かじれば気がすむんです。本気でやっているのは、芸人だけですよね。それ以外はプロになれないですから」

そもそも次長課長は井上聡がボケ、河本がツッコミだった。そのポジションを途中でチェンジしている。さらに現在は、2人ともボケとツッコミをこなす役回り。この時点で、器用だ。

「僕らがデビューした当時は、大阪ではボケとツッコミの立場が明確じゃないと、お客さんがどう見ていいかわからないという状況だったんですよ。さらに関西弁じゃないと、受け入れてくれなかった。僕らは岡山弁だったから、心斎橋筋2丁目劇場(現在は閉館)の出演オーディションで審査員に"言葉がわからないし、単純に面白くない"と言われたんですよね。それがショックで・・・。同じ日本なのに言葉はわからない、しかも面白くないと言われて。ちょっとしたカルチャーショックでした。そこから1年くらい、関西人の言葉を聞いて関西弁を学んだんです。その後、コンビ間の役割を決める時に、ツッコミは声を張らなきゃいけないから僕のほうが向いているとなり、最初は井上がボケで僕はツッコミ。でも人気が上がってきた辺りで、"ボケなのにかっこよすぎる井上の顔が邪魔をしている。ボケとツッコミを入れ替えたほうが売れる"とマネージャーに言われたんです。それで、入れ替えたんですよね。僕らの意志じゃなかった。正直、むちゃくちゃイヤでした。でも井上は、もっとイヤがっていたかもしれませんね。"なんでやねん!"というツッコミって、日常では言わないでしょ。その非現実性を、アイツは嫌がるんです。だから次長課長のコントで、声を張ってツッコむことはしません。"日常で変なおじさんが現れたら、こういう対応しかしないだろうな"という形を取っています」

次長課長のコント『同窓会』を、ルミネtheよしもとで観たことがある。再会した同級生という始まりから、最後は河本が拳銃を出し、井上を撃つ。死んだとわかったのに、延々と撃つ。最初は笑っていた観客から、だんだん悲鳴が漏れ始めた。お笑いの劇場で悲鳴を聞いたのは、後にも先にもこの回だけだ。

「僕らのネタ作りがわりとスムーズなのは、笑える部分が似ているから。その中に"しつこい"があるんです。あれも、とにかく撃ち続けるようにしたかった。お笑いというのは不思議なもので、一度ウケてからもしつこくやってると、下がるんです。"スベったな"くらいまで下がって、2段階くらい先に"もう笑いたくないのに、マジでいつまでやってんの!? "という笑いが再度来るんですよ。その"スベった向こう側"が見たいんです。見るためには時間がかかるし、強い心臓が必要。村上ショージさんなんて、すごいですよ。まさにスベりの向こう側を探している人ですもん(笑)。あの心臓がほしい!」

次長課長がブレイクしたきっかけの1つが、マニアックものまねだ。特に河本の『ジャッキー・チェンの映画に出てくる中華料理屋店員のものまね』は、「おめぇに食わせるタンメンはねえ!」というセリフで一世を風靡した。

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