東京拘置所の麻原から、政治家、戦場までを撮る、報道カメラマン・宮嶋茂樹という生き方

By Joe Yokomizo 2017/月号 P76〜79 |
ローリングストーン日本版WINTER号/連載 煙たい男たち/宮嶋茂樹 Photographs by Maciej Kucia(AVGVST)

「凄いシーンの作品は国内外問わずありますが、実際は写真で見るほどすごくなかったりするんですよ。でも、ほんの一つの酷いところを撮って、その国中がそうなっていると勘違いさせる。それも仕事だと思っているんです。小さい被害をいかに大きく見せるかもカメラマンの腕の見せどころです。ガザの空爆も、フランスのテロも、現場から少し離れると普通の景色が広がっているけど、写真だと国中が酷いことになっているように思いますから」と、客観報道とは真逆の意見を堂々と口にする。「そもそも"私"が取材するんですから、主観報道ですよ。見た者が一番強い。特にカメラマンが。それで、私たちの良心にまかせてもらっている以上、極端な演出、あるいは写真を加工しない限り、そこに映っているのが真実なんです。でも、有名ジャーナリストって、こういうこと言わないんですよ。"ジャーナリストは嘘をつかない"なんていう建前ばかり言っている。そもそも、それ自体が嘘ですから。ジャーナリストなんて嘘つきです。知ってることを知らないと言い、知らないことを知ってるふりをする」とバッサリ斬り捨てる。

しかも、宮嶋の写真は撮影対象も他者とは違う。例えば、戦場における報道写真というと、逃げ惑う市民や傷ついた市民を捉えたものがほとんどだ。だが、彼は、闘う兵士や軍艦、戦車などを美しく撮る。しかも宮嶋自身、武器について考えるのが好きで、冬になると猟銃をかついて鹿狩りを楽しむ。勢い、戦争好きなんですか?と聞くと宮嶋はこう語ってくれた。「もちろん僕も戦争反対です。ただ、戦争はなくならない。ならば、その現状を伝えないといけない。それだけです。また、戦場に行くカメラマンが武器について知ることは大事です。実際、その知識のお陰で命が救われたこともあるので」と。

かつて戦地の取材で、宿泊中のホテルが戦車に砲撃され、2人のカメラマンが亡くなった。だが、宮嶋はその戦車の性能を知っていたので、事前に隠れ、狙われず命を落とさずに済んだのだという。

ただ、こうした武器や将兵を被写体としているので、保守的だと多々揶揄されるばかりでなく、大きな賞などからも縁遠い。確かに、報道写真展などにでは、受賞作品の多くは市民派目線の写真ばかりだ。また、宮嶋が得意としてきた芸能、政界、闇社会のスキャンダルなどのスクープ写真も賞とは無縁だ。「そういうスクープ写真も、写真の質が良ければ、同じレベルで語られるべきなのに、なぜか低俗な写真と扱われますよね。でも、そういう扱いをするヤツに限って、たいしたスクープを挙げてないんですよ」とチクリと皮肉ると、こう続けた。「でも、嫌われていいと思っているので。総理大臣とご飯へ行ったことを自慢している有名ジャーナリストがいますけど、ダメですよね。ジャーナリストは政治家から疎んじられ、ビックネームの芸能人から嫌われ、悪党からも恐られてナンボです。飼いならされるのは嫌ですね」と。

それにしても、嫌われても撮りたいというモチベーションは何なのであろうか?答えはシンプルだった。それは「良い作品を残したいから」。

「家族、人付き合い、すべてを犠牲にしてでも良い作品を残したい。この業界に入ったからには、芸能人との付き合いを自慢するよりも、誰もが知っている作品を残したい。そのためなら何をしてもいいと思っています」と確信に満ちた声で答えると、再び葉巻を燻らせた。

SHIGEKI MIYAJIMA
宮嶋茂樹 1961年、兵庫県生まれ。報道カメラマン。通称〝不肖・宮嶋〟。1984年、日本大学藝術学部写真学科卒業後、講談社。『フライデー』編集部の専属カメラマンを経て、1987年にフリーとなる。主に週刊誌などで活躍し、東京拘置所の麻原彰晃やロシア外遊中の金 正日などの姿を捉えたスクープ写真を多数撮影。また、世界の災害、紛争地にも出向き撮影を続けているほか、ルポルタージュやエッセイも執筆する。
http://www.fushou-miyajima.com/


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