大統領選翌日のオバマ大統領最後のインタヴュー:トランプの勝利、これからの自分

ーもしも三権をコントロールし、最高裁判所も味方につけたら・・

トランプ支持者も含むアメリカ人全体を見た時、最低賃金は高い方を良しとし、大麻の合法化を支持する国民も多いだろう。さらに、LGBTコミュニティを正当に扱うべき、と考える人々は驚くほど急激に増えているように思う。このような考えを持つ人々は、ウォールストリートも体制も信用していない。トランプやバーニー(サンダース)は、現体制に反抗した。皮肉なことに有権者は、「トランプはバーニーのように賢い外野でいるよりも、体制側に入るべきだ」と判断した。だから今は、大きく右へ方向転換する時期ではないように思う。

共和党が州と上下院議会選挙で優位を保つことは、民主党にとって確かに厳しい状況ではある。特に中西部の農業地区や白人が多数を占める地域で、民主党や進歩主義者の主張に対する彼らの認識を変えられない限りは厳しい。歴史的な理由から、南部ではさらに厳しい状況になるだろう。

大統領職に関しては、民主党は実際に依然として有利な状況にあり、共和党に対して優勢を保ち続けるだろう。通常は8年間も同じ政党による政権下にいると国民も疲弊してくるもので、優位な状況を保つのは難しいことである。このような形での政権移譲は、近年では、或いはこの4、50年で初めてのことではないか。投票抑圧法は健全な状況とは思わないし、真剣に取り組むべきものでもないと思う。先に挙げた地域でも民主党にも十分勝ち目はあるが、もっと自己評価を充実させる必要がある。例えば、ノースカロライナ州でかつて私はわずか1ポイント差で勝利し、また1ポイント差で敗れたこともある。今回の選挙では、トランプがノースカロライナを取ったが、州知事は民主党が勝利した。その理由のひとつは、ノースカロライナ州の前知事による極右の政策に疲れたのと、LGBTコミュニティに対する偏った法規制に対し「やりすぎ」との声も上がっていたからだ。そのような環境下にあったものの、ロイ・クーパー次期ノースカロライナ州知事は住民のコミュニティと向き合い、彼らのために尽くしてきた。これも彼が当選したひとつの大きな理由である。

では、民主党や進歩主義者は問題に対するアプローチ方法を考え直すべきかというと、その通り。見直す必要がある。私がここでバーニー・サンダースと会談した際、「民主党全国委員会をもっと活性化させるべき」という点で両者の意見が一致した。全国委員会はワシントン(政権)の1組織ではなく、もっと全国的な草の根レベルの組織として、働く人々の共通利害を扱う組織であるべきだ。

ーどのようにそれを推進していきますか? 

そうだな。まず政権を引き継いだらしばらく休ませてもらって、妻を慰労したい。そして大統領職を退いた最初の1年間は、本の執筆をしながら私の大統領センターを設立しようと考えている。ここでは次世代のリーダーの育成に力を入れたい。ストーリー立て、メッセージの発信、テクノロジーやデジタルメディアの利用などの方法論を見直すことで、より説得力を持って全国的に我々の政策を広めることができるのではないだろうか。そうすれば、気候変動問題や経済的不平等問題に取り組むことの重要性を、サンフランシスコやマンハッタンだけでなく全米に伝えることができる。私は今後も積極的に活動していくつもりだ。ミシェルも引き続きよりアクティブに活動する。「草の根レベルで人々と力を合わせれば、必ず変化(change)は起きる」という信念を持っていたから、我々はここに来ることができた。政府機関が頼りにならないと思ったら、国民はあらゆる方法で揺さぶることができる。

ー気候変動問題について、トランプは「パリ協定を離脱する」と宣言しています。そんなことは可能だと思いますか? 

歴史的に見て、国際的な協定は次の政権にも引き継がれる。そもそもこれはブッシュ大統領時代に合意したものをアメリカ大統領として私が引き継いだもので、継続する意義を政策に反映させることが私の重要な任務だった。共和党が気候変動問題に対して強硬姿勢を取っているのは事実である。彼らは、我々がここまで進めてきたいくつかの取り組みをひっくり返したがるかもしれない。

Translation by Smokva Tokyo

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