大統領選翌日のオバマ大統領最後のインタヴュー:トランプの勝利、これからの自分

その中でも良い兆しは、我々が率先して進めてきた多くの事項が推進されていることである。また温室効果ガスの削減目標も、ある経済的見通しでは達成可能とされている。私は8年間の在職期間中、クリーンエネルギーの生産量を倍増し、自動車から排出される有害ガスを半減した。投資とビジネス、公共事業と消費者といったすべてが関わっているため、これらの規制はそう簡単に止めてしまえるものではない。賢いエネルギー政策は、地球にとっても国民の財布にとっても優しい、というのは当たり前のことである。「新たに創出したソーラー産業の何千万という雇用を無にしてしまうのか?」「省エネを求める消費者の意に反して、自動車業界のビッグスリーを再編し、ガソリンを大量に消費する車を作らせ続けるつもりか?」と、ドナルド・トランプや共和党議員に問いたい。発電所に関しては、石炭が衰退したのは私の政策の規制によるものではない。安価な天然ガスの方が、新たな炭鉱を掘るよりも経済的だったからだ。


「共和党が気候変動問題に対して強硬姿勢を取っているのは事実だ」と語るオバマ大統領(Pete Souza/The White House)

ーおっしゃることはよく理解できます。ただ、ほとんどの科学者が「我々はターニングポイントを越えた」と言い、コーク兄弟も議会の対抗勢力を支援しました。これでは変革とはいえません。彼らのイデオロギーの方が的を射ているように思えますし、票につながった資金提供の方がこの問題に対して向き合っているように見えます。

いいか、よく聴いてくれ。「すべてが悪い方向へ行っている」と言うこともできるし、どんな行動を起こすのも自由だ。そういうことさ。選挙があってトランプが勝ち、これから共和党が議会を仕切ることになる。気候変動問題に関心を寄せている君や私のような者にとっては、次の選挙の機会までにこの問題に関する対策をどう進めるべきか考え準備しておくことができるかどうかが鍵になる。さらに、その時までにできるだけ多くの賛同者を集め、家族のため、地球環境のため、我々の安全安心のため、法秩序のため、市民や社会の権利のために我々が進んできた道へ戻れるか、ということだ。

ともすると政治の世界しか知らないホワイトハウスの若いスタッフたちには、「歴史というのは一本道ではない」とよく言いきかせてきた。歴史はあっちへ行ったりこっちへ来たり、2歩進んで1歩下がる。気候変動問題に対する緊急性を認識しなければならない、という点では君の言うことは正しい。しかし、我々の思う対策を推進するためにはアメリカの世論を我々の味方につけなければならない、と私は常々言ってきた。気候変動問題の緊急性を国民に認識させなければいけない。我々の対策を政策に組み込むためにはまず、我々の主張を理解してもらい、十分な票を集める必要がある。8年前と比較して、我々はかなり進んだと思うが、理想にはまだ遠い。パリ協定では今から10年後の目標を設定した。アメリカはその目標を十分達成できると信じている。今後トランプ政権では、これまでと違った政策がとられるため、表立った目標達成はできないかもしれない。しかしそれでも、必要最低限の目標は達成できると思う。

胎児のようにじっとしていても何も進まない。積極的に動くことで成果が得られる。チャレンジし続けていれば、徐々に好転していく。

Translation by Smokva Tokyo

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