1970年の前半は、ザ・ビートルズの『レット・イット・ビー(原題:Let It Be)』が話題をさらったが、その年の12月、ジョージ・ハリスンは『マイ・スウィート・ロード』で頂点を目指した。ハリスンは、ハーレー・クリシュナ教のマントラとキリスト教の賛美歌『オー・ハッピー・デイ』の組み合わせにブルージーなスライド・ギターを乗せ、“ウォール・オブ・サウンド”と称されるフィル・スペクターの素晴らしい音作りによって、万人受けする究極のポップ・ミュージックが完成した。この曲はアメリカの地方裁判所で、シフォンズ(アメリカの女性ポップ・グループ)がカヴァーしたヒット曲『イカした彼(原題:He’s So Fine)』に酷似していると判断されている。ジョン・レノンはローリングストーン誌のインタヴューで、「ラジオをつけるたびに“オー、マイ・ロード”と歌うのが聴こえてくる。本当に神がいるんじゃないかと思い始めたよ」と語っている。